蟲 2016-11-26 12:01:37 |
通報 |
>手招
( 夢の様な出来事だった。と云うのも本来人間が使う言葉の意味合いとして幸せな出来事を思い起こすかの様な其れではない。本当に夢を見ているかの如くあまりに現実離れした映像がその瞳に飛び込んできた為此れは夢を見ているのではないかと脳が錯覚を起こした結果が此れである。手を伸ばした正にその瞬間中の其れは突如として外へ出ようと踠き始めた。大きな揺れと共に起こった音は中に息を潜める化け物がどれ程大きいものかを思い知らされるには十分過ぎるものであり伸ばした指先は黒に触れる前にぴたりと動かなくなってしまった。謂わば此れは危険信号でありこれ以上は危険だと身体が叫んでいるのである。然しその黒にぱりん、と割れた音が響いた時には遅く伸ばした手は其の儘にその不思議な生命の誕生をこの目で見ようと湧き上がる好奇心と共に身体は其処に止まる事を決めたのである。其処から先の出来事こそ、夢の様な出来事。みるみるうちに広がった小さな穴ぼこは気味の悪いぬちぬちとした液を伝い零し乍広がって行き遂にはその中で生を築いた生命が顔を覗かせる。”化け物”と呼ぶにはあまりに人に似ているし、”人”と呼ぶにはあまりに奇妙なその生物は人を喰らうか鋭い歯を覗かせてまるで世に月を描く如く口はゆるりやかな弧を描いてゆく。粘膜でしっとりと濡れた赤くも美しく不気味にも取れる髪が光に照らされれば相手のいるその部分だけこの世のものではないのではないかとさえ錯覚する。更に驚くは唇から溢れる言葉は悲鳴でも鳴き声でもなく、人の言の葉という事であり腹が減っただなどと言う様はまるで人の子の様。遂に相手が此方へと向かい始めたその瞬間一連の出来事を言葉1つ溢さず瞬きすら忘れて見詰めていた身体は底知れぬ危機感に意識を弾き起こされ初めて「あ、」と声を漏らす。俺を喰らうのか、と言葉を紡ごうにも開いた口は開閉を繰り返すばかりで上手く言葉を紡げずに )
( / 此方こそ有難うございました!せめて御礼はと思いましたので言葉置かせて頂きます。これからどうぞ宜しくお願い致します )
トピック検索 |