蟲 2016-11-26 12:01:37 |
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>雪呼
(ある種母胎とも言える蟲卵から出たばかりの身体は自由を謳歌する為に不慣れな四肢を懸命に使おうとだらりと垂れた足に力を込めて、髪が翻り宙を舞う様を赤い瞳に焼き付けながら距離感を測る様に毒を産み付けるタイミングを探り。臓腑が餓えに震えるようだ、ダラダラリと引っ掻く様な痒さが食事は未だかと訴える。襖が開けばその指の先へ裸足の足で廊下を歩きペタリペタリと足裏が引っ付くように粘着質な音を立てる中、教えられた通り庭へと出て。頬を切る冷たい風は飢えの前では一つと意味を持たずに、手と手を合わせ闇夜に光る猫と目を合わせ「いただきます」と礼儀正しく挨拶を添えてからゴクリ喉奥を震わせるほど生唾を呑みこんで。__地獄絵図、平穏な夜は一瞬にして一匹の猫の泣き喚く声を筆頭に地獄に変わり。べとべとべとべと、口回りを血液で真っ赤に染め上げながら牙からぷくりと滲み出る毒を猫に与えて。鋭い牙を突き立てて乾いた喉を潤すと、正に馳走を与えられた。そう言わんばかりの愉悦の笑みで武者ぶり付いて、骨まで残さず一匹を喰い尽せば残り香一つ残らない闇夜の晩餐は終わり。孵化したばかりの初の食事だからか、量は必要じゃなかったようで怯え脱兎と逃げた猫が"おかわり"になる事は無く。舌先でドロドロの赤に染まる指先を舐ると"けぷり"と小さな月賦を一つ。「ご馳走様でした」再度手を合わせれば血だらけの庭には不釣り合いの挨拶を一つ、一度瞼を落とし再び開いた頃には赤い眼はそこに無く。町へ出向けば幾らでも湧いて出るように有触れた人懐っこいただの少年、ただ異国交じりの金色を宛ら蜂のように髪に拵えて。爛々と輝く眼で広がる庭を見渡せば"けほけほ"と息がし辛いような咳込みを数回繰り返し、原因が喉奥に絡む鉄臭さと気づけばブーッとそれを吐き出してから再び自分の名を呼んだ女性を、引いては食事のありかを教えてくれた女性を探すために「…何処へ行ってしまったのだ」口角に力を込めて風に消える小さな声量でその一言をボツリと落とし)
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