蟲 2016-11-26 12:01:37 |
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>ルリヲ
まあ、まあ、__少しは柔らかくなった?(漂う肉の匂いに現を抜かしていれば放り投げた鳥籠とは既に意識の外に有り。だからこそ堪える様な絞り出した苦々しい声と跳ね返る重たい音にぱちくりと悪気一つない幼気な面を見せ、落ちた鳥籠が足の甲を赤く染めればさぞや痛かったことだろうに、それを労わる感情をこの蟲は生憎哀れと持ち合わせていなければ痛々しい程の赤を躊躇なくピンと伸ばした人差し指の腹でグイグイと押して。それも戯れとしか捉えておらず、差し出された数枚の肉を目前にはどうでも良い事と思考は埋まり。手の平にその肉を広げれば嬉しそうに表情を綻ばせ、先ずは一枚を。上下の歯を使い噛み締めるようにモグモグと咀嚼を繰り返す、唾液で解けた肉の旨味が口内に広がると初めて食べた食事が基盤になるのは仕方がなく。嗚呼、さっきの鳥は温かくて美味しかった__なんて無意識の内に比較しては贅沢な舌が嘆きを落とす。そして順繰り思い出すのは次に口にした鉄篭、なんて事は無い今食べているのはとても美味しい物じゃないかと考えをクルクル変化させ、それに伴い大きな変化は無くとも眉を上げたり下げたり忙しく動かして。飲み込む事は名残惜しいと思いながらぐちゃぐちゃに変わった肉を飲み込む、手の内には未だ肉が残る。それを配分良く振り分けて食べる事は出来ない、食べ終われば次の肉へ指を伸ばしては同様に咀嚼を行って。口内の肉を幾度も幾度も繰り返して噛み続けるだけでも満腹中枢は満たされるようで、無意識の内にモゴモゴと歯を動かす回数は多く。桶の中で波を打つ水をぼんやりと眺めてから覗き込む、水鏡に映るその姿を見て初めて己と言う存在を把握した「 死んじゃうほどに冷たいのは困るのよ。でも、これくらいなら__へいき 」己の見た目と言う物に関心が薄いのか、桶に貼られる水を手で掬えばゴクリゴクリと喉に流し喉を流れた水の冷たさを体感する。と、同時に喉の渇きまでが満たされる。ふう、と小さく息を漏らしては有る分だけを食べてしまおうと口は忙しなく休みを知らない、もぐもぐと動かしながら自らに向けられる言葉を確りと聞く。ぱさり、と布ずれをする音を纏えばべた付く着物を脱ぎ床に広げちゃぷ…ちゃぷと手を桶に泳がせてはその冷たさを楽しんで。何をするにも粘つきを与えていた感覚が消えると気分が良い、長い髪を桶に垂らして毛先を濡らしギュウと絞る。それを数回繰り返すだけで人と交われば違和が無いだろう有触れた姿に変わり。最後の一枚、渡された干し肉の最後を口に放り込み「 おかわりは終わり?もひとつ、もひとつだけ黒鈴にちょうだい 」底抜けの食欲は胃が壊れているとしか形容できず、頼りない月明かりの中ついに貪る肉は消えてしまう。ぐったり、桶に体を寄せては衣類を纏わない事の恥じらいなんて一つも持たずに濡れる髪を体に貼り付け途切れない食事の香りに言葉を続けて。彼が何をしているかはわからないが、何かを探しているガタゴトガサゴソと言う音を遠くに感じ「…何をさがしているの」ひたり、頭を拉げ二つの目に男の姿を確りと映す。ぼんやりとした声色で問い掛けるのはそこまで知りたいことではない、ただ声を掛ける切欠を作りたいに過ぎず。「 おてつだい、しましょうか。まだ食べたいの、ご褒美はわすれないで 」んふふ。と漏らす様な笑い声は少しばかりこのやり取りを楽しむように軽やかで)
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