蟲 2016-11-26 12:01:37 |
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>朝陽
__、子供じゃ無い。…… 馬鹿にするな(差し出した衣類は渡された着流しと比較するまでも無く汚い事が伺える、自覚が有るそれを見られ噴き出し笑われただけで十分気まずくて。言いえもしない妙な羞恥がぶわりと巻き起こると死にたがりの癖に負けん気は強いのか、モゴモゴとした口調では有るものの子ども扱いに対しての文句を送り。突き出された紙袋を見たまま続く指示を聞き終えて、それから数拍遅れるように理解を示し紙袋を自らの手にする。違う部屋へ足を進めてしまうその背が消えるまで見届けて、そこで漸く先の指示を思い出した。__はく、はく、と声を張り上げる訳でもなく唇の開閉を繰り返しては"布団など要らない"と伝えられないままペタリペタリと廊下を進む。自らの母胎、今となっては張りぼてのように生命を感じないただの殻の正面にて足を止める。真直ぐに、何を思うのか、何も思わないのか、生まれた事ばかりを後悔する己にとってこの殻の中で生涯を過ごし腐りきってしまう方がいっそ幸せだったかもしれないと思いを馳せるのか。落ちる欠片の一つを指で掴めば少し力を籠めるだけでパキパキと脆い音を立てて崩れてしまうそれを渡された紙袋に落していき、入らない大きな殻は一度崩して紙袋に落す。何とも単調な繰り返し作業、同じことばかりの繰り返しとは何とも性に合っている様で黙々と行えばあっと言う間に殻は片付いて。殻が詰まった妙な袋、噂好きの女学生ならば有りっ丈の小遣いを掻き集め、大枚を叩いて買うのかもしれないが蟲卵とは所詮ただの抜け殻でしかないのだ。無駄に長い四肢をだらり…と伸ばす、ぐっだりとした姿勢で腰を落とすと合わせて背中が丸みを帯びた。息をしている、酸素を吸い込むと肺がポコリと孕む様に膨らんで吐き出すと堕胎したように平らに戻る。ただそれだけのこと、生きているのだと実感をする。……つう、と手の平を滑らせて床を撫でれば細かい殻の欠片が肌に引っ付き少しだけ痛みを覚え、矢張り自分は今を生きているのだと思う。早く戻れ、早く戻れ、圧迫されるように縋る思いで願うのは孤独に触れてしまえば一溜りも無くまた死ぬ楽を選びたくなるからか、「__早く戻れよ」堪らずに呟いた。搔き消える程小さな声量は一人きりの部屋に虚しく響き、一人で漏らす本音が嫌にむず痒くて、言葉に出したことで一層と自信に満ちたあの表情を傍で感じたいと願ってしまい"げふんげふん"と誤魔化しの咳込みをしては頭を抱えて)
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