蟲 2016-11-26 12:01:37 |
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>黒鈴
そう、黒鈴がお利口で良かった(表情の変化こそ少ないが微笑みと声には子供じみた得意げな響きがあり鳥籠を叩きつけた事さえ除けば見た目や仕草は淑やかでお転婆には遠いようだしと目を離す事への心配は薄れ、はっきりと褒めるともなく返せば廊下へ続く襖を引き。一歩踏み出したところであ、と呟けば半分振り返り、言いつけ通りに体を拭っている相手の背に「お利口ついでに。「おとおさま」はよしてほしいね」親と思われたとしても数回呼ばれただけでさえ呼び方は居心地が悪く、そう残すとすぅ、と襖を閉め。
──階段を降りると大きな音がしたがどうしたと心配する夫婦に出くわし、窓を開けていたら猫に入られてしまい文鳥の籠がひっくり返った、それで汚れてしまったから今から掃除をすると我ながら嘘くさい嘘を吐いて深々と頭を下げてみせれば優しく慰める夫婦、気にするなというのを押し切って夫婦が寝室に戻るのを見届けるとさっさと勝手口に向かい。一人きりになったからか頭を巡るのは訊ねたつもりもなくもらった長居をしてしまったという返事。それならあと一日二日も早く蟲卵を叩き割れば出てきたのは少女だったのだろうか、それとも蟲と言うからには蛹のようにあの殻の中で蟲は溶解していたのだろうか、部屋で待つ相手の姿を思い出すでもなく考えだけは巡らせながら手押しポンプで水を汲み。──
水を溜めた桶と手拭いを持ち、保存食の干し肉を僅かだがポケットにくすねて再び自室に入れば一番に目に入ってきたのは鳥籠を舐める姿。影絵のようなそれは絵にもなるがはしたなさも否めず、水音を絶つように襖をトン、と閉め「美味しいかい」皮肉っぽくたしなめて近付くと下にある相手の顔をのぞき込み)
(/室外の部分を分かりやすいよう改行で書きましたが、好かない表現だった場合は教えてください。あまり使う表現ではないと思いますが、その場合は今後控えますので)
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