蟲 2016-11-26 12:01:37 |
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>ルリヲ
蟲卵の中はあたたかいの。だから、きっと……_すこし長居をしちゃったのね(その姿を、存在を、眼に焼き付けると重さを持った黒髪のうねりを目で追掛けて、甘く明るい瞳の色彩をおいしそうと思う。ぼんやり眺めているものの、独り言のように淡々と送られたその言葉に合わせて怠慢なゆらりとした動きで頭を拉げ、大きい理由を考える。鈍さすら持つ声でその理由を言葉足らずに落とし、突如立ち上がるその姿を上目に追掛ければ己に与えられたシーツに頬を寄せて「 黒鈴は聞き分けの良い子よ。おとおさまを困らせる事はしないわ 」動くと糸を引き、ぬちゃり…ひたひた…と粘っこい音を立てる粘液を切る為にシーツを体に向ける。静かな微笑は嘘では無い、何処か得意げに胸を張りくすくすと囀る様な笑い声を共にして静かな部屋に響かせる。足を伸ばせばスラリと年相応に大人びたその体をシーツで拭う。パリッとしたシーツは体を拭くとあっと言う間に見るも無残な布きれに変わり、引き換えに体のベタ付きが消えて気分が良い。ぽい__手にしていたシーツを投げ捨てれば「 わたしは未だ食べたいのよ 」周囲をゆらりと見渡して、言いつけを守る様に大人しく。音を立てずに部屋の中を探る、そこに何か食べ物が置かれていないか探すために目を凝らし手を伸ばす。耳を澄ませてみたものの、他に生き物の声は聞こえないと悲しくなった。ふう、とため息を一つ落とせば鳥の香りが微かに残る鳥籠を手に持ち上げて、自身の視線の高さまで空になったそれを掲げると数秒ばかりだんまりそれを見つめる。そうしてヌラリと舌を目いっぱいに伸ばせば、飴でもしゃぶる感覚なのか冷たい錆びた鉄の鳥籠に唾液に濡れる舌をべろりと這わせ、ぺちゃぺちゃ…と嬲る水音だけを月明かりの中静かな部屋に響かせて。)
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