蟲 2016-11-26 12:01:37 |
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>砂乱
ありがとう、だけれど私が望んでいるものは残念ながら違うの。私が描きたいのは__貴方よ砂乱(この時期の井戸水に手を浸けたせいだろう、野菊を摘んできてくれた彼の手は寒さにより赤みを帯び痛々しい。どれくらい冷えているのかしら、ふと気になり自分の両手で花を持つ手ごと包み込み。_あら、風邪でも引いてしまいそう。蟲が風邪を引くかは甚だ疑問だが暢気にそんなことを思いながら上記の通り答え合わせといき。写真家なら写真に、作家なら文章に。あの蟲卵から這いずり出てきた瞬間の感動をそれぞれ収めておきたいと思うんじゃないだろうか。それが親心から来るものなのか、はたまた別の何かなのかは分からないが私だって美術に携わる身、絵にしてみたい、しておきたいと思うわけだ。その為には彼に私の事を知ってもらうだけでなく、私も彼の事を知りたい。そう思う訳で。“知らなさすぎる“この言葉で彼が苦い顔をし考え込んだが私だって同様なのである。相手の事を知らない事がこんなにもモヤモヤするものだとは知らなかった。未だ握ったままの手に僅かばかり力を入れ「貴方の事も知りたいわ私」そう口にし。人間相手ではないにしろこんなにはっきり自分の意見ではなく感情を伝えるのは普段滅多にしない事で気恥ずかしいとはこういう時に使うんだろうな等と伏し目がちな表情をして。こうして言いたい事を言い終えると漸く離した手で盥を持ち縁側に向かってさっさと歩き始め。こういう女学生風に言えばムードのない行動が相手をもしかしたら驚かせるかもとは考えられず返事を待たないのは自分が知りたい事を相手が教えてくれると思っているに他ならない。故に既に頭の中を占めているのはお湯を沸かさなければ、ということで)
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