蟲 2016-11-26 12:01:37 |
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>黒鈴
(再び頬杖をつけば産まれたてで力がないのか鳥籠の仕組みが分からないのか獲物を目の前に籠を弄ぶ相手を他人事のように眺め、気味の悪い粘液を滴らせた異形と分かっていてさえその様子は可愛らしく見え、美しいと思える、だからこそ失望の大きさに頭がついてこずやけに暢気に構えてしまい。死にたいわけではないが殺されるのならば可憐な少女に、異形を前にしてさえ霞む事のない難儀な異常嗜好に意識が傾いていたのを引き戻したのは何かが叩きつけられた音、肩を跳ねさせてはっと瞬いた目に映ったのは無残に掴まれた文鳥が聞いた事もない、まさに悲鳴と言わんばかりの鳴き声を上げて躊躇いなく口元に運ばれる捕食風景。目にも耳にも決して心地の良いものではないが意外にも静かに行われた捕食と『おかわり』に微笑む姿、耳元で零れたような吐息に短く息を吐いて肩を落とせばそこで漸く呼吸を忘れていた事に気付き、二、三度深呼吸をしてみると吸い込んだ空気の鉄臭さに少し噎せ。このまま食われても可笑しくはないというのにさっきの物音で夫婦が起きてしまったのではないか、と妙に落ち着いて考えている奇妙さを自覚し始めるも気付けば複眼の消えて二つっきりになった目に見つめられてさえ焦りなど湧かず、「初めまして、黒鈴。俺はね、ルリヲ」日頃なら名字を名乗るところを実は気に入っている名前の方で名乗れば「食べられても良いと、思っていたのだけどねぇ……ああ、こいつをどうしたもんかな」溜息交じりに言って視線を落とすと思い出したように漏ってはいないだろうが畳にだいぶ染み込んでしまった粘液を指に掬って)
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