蟲 2016-11-26 12:01:37 |
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>砂乱
(きょとん、音を当てるとしたらこの表現が一番しっくりくる、そんな顔をし此方を見る彼の顔が名前を告げた途端パァと綻ぶ様は見ていて飽きぬ物だが自分の悪癖故に中々複雑な物でもあり。悩み等一つもなさそうな表情で、先程私が言った言葉をもう忘れてしまったのかと微かに疑うものの雪ちゃんだなんて可愛らしいあだ名に思わずその件はまた後でもいいかなんて考え。歩けば隣に廻り感謝の言葉を述べたかと思うと髪をいじり同族かと聞いてくる。こんな無邪気な生き物が蟲なのか、私は今まで何かに対してこんなに素直に感謝の念を伝えた事が在るのだろうか。何なら私の方が余程悪どい面を持ち合わせているんじゃないのか。そう考えると何だか可笑しくなってきて微笑みではなく久方振りにふふっと声に出して笑い。「その悪戯な手は先程猫を食べたせいかしら」何処でスイッチが切り替わったのか髪を触る手を引き剥がすと、観察対象や偏愛対象を見る何処か冷めた目付きを血の通った生き物を見る心なしか温かな目付きに変え見下ろし。掴んでいた手を離しつっかけを履いて庭におりると井戸に近付き。持っていた盥に水を汲もうと桶をするすると下に降ろしていき。すると背後から聞こえてきたのは先程とうってかわって控えめな声。まるで要求するのを恥じるかの様なその声にむくむくと芽生える被虐心。「いいえ構いませんよ。ただこうしましょう、砂乱も私に奉仕してくださらないかしら」今いま水を汲んでいるのだから私が彼に行う作業等容易なものだ。彼がこの言葉に乗ってくれるかは分からないがもし乗ってくれたなら儲け物だな、そんな事を考えている私は酷く愉しげに微笑みを浮かべていることだろう)
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