蟲 2016-11-26 12:01:37 |
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>砂乱
(どれくらいそうして蹲っていただろうか。微かに聞こえてきたのは人の声、それもまだ幼さの残るもの。何処か不安そうなその声に砂乱だ、そう思いもう食事はいいのか、その汚らしい身形をどうにかしなければね等と思う事はたくさん有る。有るのに、見付けないで探さないでと思うのは何時もの悪い癖だ。貴方が私を好くならば私は貴方を嫌う。だけど貴方が私を嫌いなら私は貴方を好きになる。そうまるで悲劇のカルメンのよう。矛盾していて自己中心的な私のこの悪癖は、これまでに多くの人を遠ざけた。私はきっと砂乱を好いているのだと思う。常人のように人を好きになったことがないから断定する事は出来ないけれど、多分。だから彼は私を嫌いにならなければいけない。でないと私が彼を好けないから。だのにそんなに不用意に笑みを向けれても困ってしまう。心配_、私はそんな物を受け取るに値するのだろうか。だから思わず言ってしまおうかとも思ったのだ。「私の事は嫌いなさい」と。だけど容姿に似合わぬ大人びた口調から一転、年相応な不貞腐れたような表情にほだされて気が付けば口ばしっていた。「草薙雪呼と云うの」ハッと気が付いた時にはもう遅い。名乗る為に上げた顔は此方をじっと凝視する瞳に忽ち視線を絡めとられてしまう。瞬間心拍数は跳ね上がり、益々次に打つべき一手を見失う結果となった。ただ救われたのは私を虜にするあの凶暴な赤い瞳でないと事だった。もしそうだった場合、私の方が彼に襲いかかっていた事だろう。喰われるかもしれない事等一切躊躇せず。その瞳を自分の物だけにする為に。その視界に私だけを写す為に。危なかった、そんな葛藤を隠すかのように目線を外しおもむろに立ち上がるとお得意の困ったような笑みを浮かべ、湯を沸かすから体を洗いましょう?と幼子に話し掛ける時と同じ様に言葉を発し井戸に向かう為体を彼から背けて)
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