蟲 2016-11-26 12:01:37 |
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>黒鈴
(近付いた相手からは水と干し肉の少し塩っぽさ混ざったなんともいえないにおいが決して嫌ではなく香り、耳元で響くような笑い声はいかにもくすぐったく真正面から受け止めるとても生餌に食いつくとは思えない顔立ちもあればそれもひとしおで、頬に宛がう指の動きをぼんやり気にしながらほんの僅かに首を曲げ心中で優しい、と復唱する。零れた言葉の意味がまるで分からないのは幼い頃から奉公生活にやつしてきた身には言う事をきくのに程度の差はなく当たり前の事でそれを優しいと思ったり言われたりした事はないからで、とはいえ相手は雇い主ではなく、そうなれば夜更かしを良しとしたのは客観的に見れば優しさになるのかもしれないがそんなような事を考えても自分に優しさ、なんて言葉はあまりに馴染みがなくどこを見るでもなくなっていた焦点を相手に合わせ直して。あまりに理想に近くあんまりに理想とかけ離れた蟲、失望こそし切ったのに未だ魅力を感じている蟲、好きと言われて悪い気はしないあたり蜘蛛だと言うのなら巣を巡らせるのがなんて上手なのだろうと思う。それか案外、難儀な嗜好のせいで気付かなかったが自分は単なる面食いなのかもしれないと瞬間に思いつつ「どうにも、このお馬鹿さんはお前が可愛いらしい」それは他人事じみた大した事でもないような、実際些事にしか思ってもいない口調で。ふと赤い瞳がこちらを向くとその視線も声までも甘ったるく、潜めた声がかえって反響して聞こえる錯覚。一息ついて続く紛れもない捕食者の願望を聞くと何故だが口角が緩んでしまいそれでこそ可愛いとさえ感じるのがこの蟲の魅力であるように思えるが、実際に浮かぶのはいささか苦い笑み。「そいつをどうしたものか、夜の徘徊者にでもなってしまおうか」即座によしと言えないのはこの六畳一間が住処の身の上のせいで、相手を匿うのさえいつまで持つか分からないものの月が踊るこんな夜中にしんとした街を徘徊する様など想像しながら呟いて。そんな事をしているうちに相手も自由にしていて月の味などと言い出したので戻ってきた目を見てから、一度月に目を遣りそれから改めて見つめ返して「さぁねぇ……ゾッとするほど生ぬるそうかな」窓向こうで暗い空にぽっかりと浮かんだ月は柔らかい黄色に見えたがそれに温かみよりも不健康な色味を感じ、味など思いつきもしないがもしもあの月が舌に乗ったならば、ひどく嫌な舌触りだろうとは思って)
(/こちらこそ温かなお言葉ありがとうございます。
それと、もしかしたら今年最後の顔出しになるかもしれませんので一言。素敵なスレに参加出来て、想像以上に可愛い黒鈴さんにお相手してもらえて幸せです!これからもお返事が遅れる事があるかと思いますが、あまり遅くなるような時は報告するようにしますので、これからも宜しくお願いします。良いお年を!)
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