蟲 2016-11-26 12:01:37 |
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>白雨
(返事の代わりに聞こえるのは僅かな衣擦れの音。応えがない事に不安になったのは一瞬で、襖が開き彼の姿を視界へ収めれば、それは何事も無かったかのように霧散する。思った通り、黄金の髪と濃紺の浴衣はまるで夜空とそこに浮かぶ月のようで、月光が如き儚さを持つ相手によく似合う。ああでも、もし次があるのなら。その名の示す明るい空と雨の色を着せてみたいと、細やかな願いを胸に抱き「ええ、とても似合っているわ。……素敵よ、白雨」照れたように頬を掻く様子が愛らしくて思わず目元を緩めれば「失礼」と帯が少し曲がっていのを指先で軽く整えて満足げに微笑む。過去と現在が目の前で重なり、交わるような、そんな光景。代わりにしようなどとは露ほども思っておらず、あの人代わりなど居ないし、目の前の彼は彼だから心惹かれるのだと分かってはいるのに、彼が動くたびに懐かしいあの人の香りが掠めるのに少しだけ複雑な心持ちでいれば、強い視線と弱く引かれた袖にハッとして考え込む様に伏せていた視線を上げて「もちろんよ、気の済むまでお話をしましょう。……だってわたくしはまだ、貴方に名前しか伝えられていないのだもの」自身の事を教えて欲しいと言う先ほどの要求にまだ応えられていないのだから、こんな事は我儘のうちに入らないと言わんばかりに二つ返事で了承をし、袖口に触れる彼の手を両手でそっと包み込む様に握ればそのまま自身の頬に触れさせるように宛がう。先ほどからまるで壊れ物のように扱われるものだから、大切にされている事が嬉しい反面、少し寂しくもあり。故に触れても大丈夫なのだと伝えたかったのだが、流石にはしたなかっただろうかと不安を覚えて僅かに指先に力が入る。「その…ね。人に触れられるくらいでは、壊れたりだなんてしないから……だから…」続く言葉は口にすることができず、ちらりと一瞬だけ視線を彼の瞳に向けては気恥ずかしくなってしまい、顔を俯かせて)
(/ご快復なさったようで何よりです!ですが気温の安定しない日が続きますので、ぶり返しには十分にご注意くださいませ。
また、ただ今暮の怱忙に追われておりまして、お返事が安定しないことをお詫び申し上げます。)
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