ハザマ 2015-05-13 13:04:14 |
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>アマネさん
……、(記憶が戻る可能性は低いと診断されてからか少し途方に暮れて、何か分かり次第連絡すると約束した昼間逢った相手へとその旨を伝えるべきなのかどうか執務席に座ったまま考えが逡巡し。何処までも優しく包み込むような笑顔や柔らかい眼差しの水色の瞳(め)から溢れていたあの涙を思い出すと少しかぶりを振りつつ思考は宙に溶け。移動の手続きやらを処理した書類を取りに来た部下に淹れて貰った珈琲はすっかり冷めてしまっていて)
お話し、するべきでしょうか…。(マグカップの黒い水面を見ていた視線をふと一旦腕時計へとやると、夜の7時を指す針が見えて。大事な話を文面で伝えるべきでは無いだろうなと判断したのかまだ起きているだろうかと、こんな時間に伺うのなら普段は必ず一報を入れる筈であるのに対し、居ても立ってはいられないのか執務室を後にして)
………。(思わず勢いで来てしまった自分が今一番信じられなく、聞いていた宿の門構えを前にして急に頭が冷えてきたのか手前で止まりながら少し唸り。やはり日を改めて出直すかと一旦靴先を元来た道へと返そうとした所でぐいっと下から手を引っ張られて吃驚し、下を見ると行灯の淡い光で見えたのはあの似通った双子の子供達の顔で)
あ!…あの、こんばんは。昼間は途中ですみませんでしたね…?(くすくすと燻るように笑う子供達の声に何と無く安堵しながらそちらへと向き直り、少々来訪には似つかわしくない時間帯なのだが「アマネさんは…今どちらに?」と会いに来た相手の所在を彼女らに窺って)
>テルミさん
運が悪い方、かもしれませんね。…あ、いえ。それは私ですか。(以前の事など何事も無かったかのように自然と互いに話していながら、どちらにとっての運の悪さなのかは明確にしないままであったものの。それは自分の方かもしれないと)
ご無沙汰しております。テルミさん、お元気そうで何よりですね…(此方の位置からでは相手の表情を伺う事は出来ないものの、声色からして分離した相手の体調はまだ幾分か良さそうなのか全く不機嫌という訳でも無さそうな雰囲気は汲み取ったらしく、ただ口元に湛える邪悪な笑みには気付けずに。何をしに来たのかと問われると黄色いフードコートが翻る同じ背格好の背中を眺めながら)
いえね、大佐にこの間言われたんですよ。…テルミさんを見付け次第連れ戻して来いと、でなるべく私は損傷せずに帰って来いと…?(彼の所持していたスサノオユニットを再び彼が手に収めている今、中々無茶な要望を思い返すように軽く上げた両手を弱々と下げつつ彼の求める答えを包み隠さず答えるものの)
こんな所でお会いするとは妙ですね?貴方がこんな洞穴(ほらあな)に何の…、(用なのかと聞こうとした声を止めながら相手の背中越しに見えたその深淵の闇を一旦眺めて、僅かながら顎を引きつつ革靴がじりっと後退し)
えっと、テルミさん、お会い出来て感動のなか悪いんですが……また良からぬ事。考えてません?(誰も相手が感動していると一言たりとも発してはいないが、先程から表情の読めない相手が些か静か過ぎて一層不気味に思え。もしやと)
>レリウス大佐
――記憶が戻る可能性は低い…、と。(再び歩みを再開した相手の後ろに続きながら口内でそれを噛み砕くよう理解すると何故だかは分からないが今までに感じたことの無い喪失感に底知れぬ不安がじわじわと背中を伝うように襲い、あの隠し持っていた持ち物を踏まえてもとても大事な記憶なのではないのかと。充足されていた部分が急に抜け落ちたかのようにぽっかりと胸に空洞が空いたような気持ちを抱いたまま靴音を吸収する機内の青い絨毯を踏み、相手の座る隣の席へと腰を降ろしつつ考え事をするように)
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