江戸には色町傾城町がある。行為の代わりに金を受け取る遊女達が居るのだ。
色町といえば遊女の町だが、其の外れ、薄暗い通りに、風変わりの店があった。
夢喰処……ゆめくいどころ、というのが其の店の名前だ。
其の店は売春していない。働き手は皆男である。
外れと言えど色町にある店、行為のひとつやふたつしそうなものだが、一切しない。
するのは客人の嫌な夢を"喰う"ことだけ。
嫌な夢を喰われた客人は、一時は上機嫌で帰っていくも、又嫌な夢を見、喰ってもらいに夢喰処へとやってくる。
働き手は客人の望み通り夢を喰い、金を貰う。
そして客人は上機嫌で帰っていく__そう、言わば麻薬のようなものである。
表沙汰には夢を喰うと言っているものの、本当は夢だけではなく"精気"も共に喰っている。
其の為、何度も何度も通う内に生きる力でさえも失っていく__。
そうして弱った客人を、夢喰処の働き手たちは喰ってしまう。
夢でも精気でもなく、客人其のものを喰ってしまうのだ。
そう、働き手たちは人間ではない。
其の異形の姿から人間界から弾き者にされた人外たちだ。
人間をとって喰っているのだ、噂にならない筈がない。
一部の人間たちの間で、夢喰処は噂になっていた。
そして__其の噂は、軈てある組織の耳に届いた__。
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