[ml]社員とオーナー[創作]

―…そか、なら良かった。（運転疲れしてないみたいで良かったと上記を述べる。彼の隣で歩いて水族館の入口へと足を進める。時折周りを見渡して見ればやはり人がいない。緊張や楽しさが込み上げてきては彼の顔を見遣る事が出来ず唯行く先のみに視線を向ける。「―…イルカショーとかやってんのかな。」小さい頃からイルカが好きな事は覚えていて何となくこの歳になっても見てみたいという気持ちがある。何気なく前記を呟いてみて。）

さぁー、それは中に入ってからの楽しみだな。（何気なく呟いた言葉を拾っては何処か意地が悪いように頬を緩め口元に笑みを描きながら受付で知り合いの女性と軽く挨拶とたわいも無い話をしながらふたり分の入場券を買い終わればじゃあ、と女性に手を振り、彼の手を再度握っては水族館へと入場すれば「さて、今日は遊槻君のエスコートをおじさんなりにやらせて貰うからね。」と前記を呟けば早速大きい生き物よりも初めに小さいものからと自分が何時も見ている順で行こうと思えば小魚や珍魚がいるコーナーへと足を勧め。）

―…ふーん。（入場券を買うかと思いきや自分を他所に受付の女性と会話をし始める彼。その姿に何処かもやもやとした気分になれば会話が終了するまでふら、とその場を離れようとするも途端に手を握られ歩き出す彼。会話が終わったのか。擦れ違う受付の女性に軽く頭を下げては彼の速さについていき。「―…なら任せるからな。」エスコートしてくれるなら助かる。なんて思っては笑みが零れる。目の前に小魚や珍魚がいる水槽へと着けば「―…可愛い。」なんて呟いて見入ってしまう。）

可愛いだろう。（此処は基本アクアリウムが中心なんだよ。と言葉の語尾に付け足しては近場の水槽を眺めるように目尻を細めれば小さな小魚や熱帯魚、水槽にゆっくりと指先を這わせればくすりと笑ってしまう、「次に何処行こうか。」とエスコートすると言いながらも意外にこの水族館は広く時間も時折気にしないといけない為に水槽を眺めながら小さく唸り声を上げながら考えている中、「―之も可愛いぞ。」と彼の方に顔を向けては目の前の水槽を顎で示してはおいで、と手招きし。）

―…エスコートしてくれるんだろう？（二人っきりの水族館。薄暗く静寂した雰囲気を気に入った様子。次何処に行こうかなんて考えている彼に前記を述べて笑みを零す。彼の元へと歩み寄れば「―…本当だ。可愛いな。」と彼が示す水槽を覗き込んでは呟く。不意にガラス越しに薄らと映る彼の姿。魚ではなく其方に視線を向けてしまえば目が合った様な気がして直ぐに視線を逸らす。）

いやーな...魅力的な場所が多くてな、悩んじまうだよ。（聞かれていたのか彼の言葉にけらり、と小さく笑っては己の頬を指先で掻く素振りを見せ。近くなる体、彼の匂いが鼻先を微かに擽っては思わず頬を緩めてしまう。次の水槽も見ようか。と幾つか並べられている水槽を見据えればすべて回るのは時間帯的に無理なために可愛いものと今世間でいうぶさかわいい小魚でも見ようと思えば水槽を順々と見回りながら時折左手が寂しく誰もいない事を都合に彼の手をそっと握る、）

―…こんだけあれば悩むよな。（確かに彼が言うようにどれも魅力的で全て回りたいくらいのものだ。彼についていき順々と水槽を眺めて行っては握られる手。どうかしたのかと彼に視線を向けるも何ともない様子。「―…誰かに見られても知らねぇぞ。」なんて誰もいないのに告げてみては此方からも握り返してみる。然し不意に気になった受付の女性。もしかして彼女だったりするかもしれない。仲良さ気だったし。なんて考えては手なんて繋いで大丈夫なのだろうかと心配になると握り返す力を弱めて。）

まだ、沢山とあるからさ...余計に悩んじゃうだよ。
（くすりと小さく口元から笑みをこぼせばアクアリウムのコーナーから出ていけば徐々触れ合いのイベントがあった筈だと思えば彼と手を握ったまま廊下を歩いていけばにぃ、と何処か悪戯っ子のような笑みを浮かべれば「―見られるならもっと見せつけてやる。」と呟くものの彼は自分と手を繋いで嫌な思いはしないのかという小さな不安がよぎるが弱々しく握り返されることに小さな安堵を漏らしてしまうこちらから強めに握り締めて「―はーい、ついたぞ。」と既にイベントが始まっていたのか天井がないふれあい広場へと出れば其処にはペンギンやアシカ等の触れ合う動物が沢山いれば彼に視線を向け。）

―…見せつけてやるって阿呆か。（彼の言葉に呆れた様に笑みを浮かべる。握る力を弱めたにも関わらず強く握り締めてくる彼。大丈夫なのだろうか、そればかり心配してしまえば無意識に「―…受付のお姉さんに悪いんじゃねぇの？」なんて彼の方を見ること出来ずに視線逸らしたまま尋ねる。徐々に視界が明るくなってこれば何やらふれあいコーナーに着いたらしい。ペンギンやアシカ等沢山可愛いらしい動物たちが目の前に居れば彼と視線を合わせ「―…こんなところあるんだ。凄いな。」なんて笑みを零す）

...可愛らしいな!!。
（彼の言葉にえっ、と思わず間を開けては驚いたように瞬きを早めに繰り返せば思わず大声をあげ笑ってしまう、彼の手を一度離しては頬に手を添えては親指で擽るように撫でてやれば「あの子は俺の同級生。同級生以外他の関係はないよ。―まさか、俺があの子と付き合ってる気がした?。」と笑いながら本当に可愛らしい子だな。と思えば彼の耳元に唇を寄せては恋人いるのに君をデートに誘ったりはしないよ、君以外には興味はないからね。と囁いては体を離してやれば「まぁな、それでもあんま人気はねぇんだ、此処。」と近場にいたペンギンやアシカを撫でたりと戯れ。）

―…そうならそうと早く言えっての。（自分が尋ねた事に対して笑っているのだろう。そんな様子に何となく答えが予想つけば案の定その通りの言葉が返ってくる。変な事を言ってしまった事に羞恥が込み上げてこれば片手の甲で自分の口元を隠す。付き合っていると思った？なんて聞かれると小さく頷いて。後に耳打ちされればその言葉に顔を背けてしまう。動物たちを撫でる彼を横目で見遣りつつ自分も触りたくなったのかその場にしゃがみ動物たちと視線を合わせてはそっと撫でてみて。）

―悪い、悪い。（くすくす、と未だに幾つかの笑みを口元から零してしまえば手の甲を口元に押し付け顔を隠す彼をちらりと視線を向ければ矢張り可愛らしいと思ってしまう、素直に小さく頷く彼に何人かの友人に間違われたなとそんなに仲良くみえるのか。と女性と自分の行動に素直に疑問が浮かぶが矢張り目の前に動物に直様思考を持って行かれてはよしよし、と声に出しながらアシカとペンギンを交互に撫でれば「癒しだね、次の動物園も癒しになるよ。」と頬をだらしなく緩めながら小さなペンギンをよいしょと軽く持ち上げたりとし。）

―…もういいよ。（未だに笑っている彼。もう早く忘れてほしい出来事だ。然し勘違いされてもおかしくないくらいのものだ。仕方が無いといえば仕方が無いもので。「―…うん。すげぇ、癒される。」ペンギンを抱き上げる彼。そんな様子を見遣ればくすくすと頬を緩める。動物たちを見ていれば普段の仕事のストレス等無くなってしまいそうで。自分も指先で擽る様に動物たちを夢中で撫でて。）

―はいはい。（口角を緩めてはゆっくりとペンギンを下ろしてやればゆっくりと立ち上がれば彼の隣へ、腕時計に視線を送れば「さて、イルカショーに行きますか。」と彼へと視線を向ければ口角を愉しげに吊り上げてしまう、再度彼と手が握りたく仕方がなくもう一度彼の手をそっと握りしめればある欲望が込み上がる、其れは指を絡めては手を繋ぎたいという欲望。然し自分なんかでも良いのか思ってしまう、下手に嫌われたくはない。逆に好かれたい為に此の儘で維持すればふと彼の隣へ。手がダメならと思えば腕を取り己の腕を絡めては何事がなかったように歩き。）

＿＿お、イルカショーか。（彼の言葉に一番見たかったイルカショーを見に行くと分かれば立ち上がって彼の隣を歩こうとする。再び手を繋がれればもうもやもやとした問題は解決したのですんなりと手を握る事が出来る。早くイルカショーを見たいとわくわくした気分で向かっていれば不意に腕を絡めてくる彼。いくら人が居ないからって遣り過ぎだ、と苦笑いを零す。「―…あのー、麹塵さん？何してんの。」と冷たく述べてみて）

ん?腕を組んでいるだよ。――あっ、おっさんとは腕を組むの嫌か。
（冷たく述べる彼にやってしまった。と表情を微かに歪めてしまえば素直に彼の腕をぱっ、と離せば申し訳ない表情を浮かべれば御免な。と一言謝罪の言葉を述べれば彼との間に多少距離を開けてはイルカショーが行われる場所へと移動する際、ふと見かける禁煙スペースに「ごめん、遊槻君。此処を真っ直ぐ行けばもうイルカショーが始まる場所にいけるから先に行ってて貰えるかな?一服したくってね。」と懐から煙草の箱を取り出しながら呟けば苦笑を口元に浮かべながら喫煙スペースへと向かい。）

―…いや、嫌とかではないんだけれど。（素直に腕を離す彼。そこまで嫌がったつもりはないのだけれど謝る彼を見ればかなり気にしている様な様子。少し言い過ぎたかなんて考えていれば道順だけ述べて喫煙スペースへ行ってしまう彼。少し寂しい気分にもなったがぶらぶらと一人で少しだけ歩いてみる。然し直ぐに立ち止まって近くにあったベンチへと腰掛け彼を待つ。先に一人で行くよりも少しでも彼と一緒に居たいという気持ちがあって。）

――...。（はぁ、と小さな溜息が口元からこぼれてしまう、煙草の箱から1本取り出せば何時ものように口端に咥えてはライターで尖端に火を点火してはゆっくりと有機物を肺へと送り込むように吸い込んでは呆けたように吐き出される紫煙を見つめて吸うこの動作を繰り返しては30分程度、つい3本も吸ったことにあらら、となんて間抜けな声を漏らしながらもうイルカショーの途中なんだろう、と思いながら喫煙スペースから出て行くと近くあるベンチに座る彼を見つければ驚いたように瞬きを繰り返しながら見詰めれば「...えっ、まさかイルカショー行われてなかった?。」と驚いたような口調で彼に問いかけ。）

―…あ、始まったか。（遠くから何やら歓声やパラパラと拍手の音が聞こえてくる。きっとイルカショーが始まったのだろう。イルカを誘導するお姉さんの声もマイクを使っているせいか響いている。まだかなー、なんてぼー、とした様にずっと彼を待つ。もうすぐ30分といったところか。腕時計を見ては溜め息が零れる。足音に気付いて其方に視線を向けるとやっと彼の姿。「―…もう始まってるよ。あと10分もしないうちに終わるんじゃないかな。」なんて述べては小さく肩を竦めて。）

―なんで、待ってたんだ?。
（己の後頭部に手を伸ばしがしがし、と乱暴に雑に髪を掻き乱しては彼を見下ろしてしまう。怒っているつもりはないが自分のまったく出来ていない気遣いに溜息が溢れてしまう。彼の隣に多少間を空けるように腰を下ろせばもう今から行っても殆ど楽しめないだろうと落ち込んだように肩を落としてしまえば「...次の動物園で楽しもう、か。」と酷い苦味が孕んだ笑みを口元に描きながらぽつり、とつぶやき。）