owner. 2013-07-07 21:04:24 |
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お前だって俺に餓鬼だの馬鹿だの無職だの言ってんだろーが。ばーか、こんくらいで風邪なんか引いて堪……、
(抗議してくる彼女の声には明らかに不満の色が滲んでいて。しかし此方は此方で日頃散々な言われようである。負けじと反発する辺り、餓鬼だと罵られても無理はないという自覚が本人に無いようで。この程度で風邪を引く程柔じゃない、と言いたげに鼻を鳴らしながら返した時、ベッドから降りる彼女に気付き、此方に向かって伸びるその指先に意識が集中し。が、その感触を感じる事なく己をすり抜けていけば、彼女とほぼ同じタイミングで言葉が途切れてしまう。口許に手を当てながら俯いてしまう彼女。髪で表情を隠すようなその姿がやけに小さく見え、何故かズキリと胸が痛んだ気がして。 ――何か、何か言わねぇと。 気が利いた言葉を必死で探すが、只でさえ彼女とは言い合いくらいしかして来ていない上、こういった雰囲気が苦手なせいか無性に焦る。強気な彼女が泣き出すとは思えない、それでも傷付いている事くらいは己にも分かる。彼女を直視する事が何となくなく躊躇われ、視線を泳がせた先に先程冷蔵庫から取り出したペットボトルを見付け、手を伸ばし。風呂上がりに加え、変な緊張のせいでカラカラになった喉を潤した後ちらりと彼女に戻せば、しんみりとした雰囲気の打開を試みて態とらしい咳払いをひとつ。「えー…、伊月逢さん。おま…、…あなたは暫くの間何処をほっつき歩いてたんですか。」先程のおどけた調子を続行する事にし、“一番訊きたかった事”を敢えて外した質問を投げてみて)
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