赤の女王 2025-10-01 02:40:23 |
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>トゥイードルダム様
…そういう物がこのお部屋にあれば、少しは夜と仲良くなれるのかしら
(それを見るだけで、眩しい輝きに満ちた寒くも暖かいこの催事のことを思い出せるような、そんな思い出の品物があれば。たった一人世界に取り残されたような気がする孤独な夜にも灯りが燈るのだろうかと、半ば独り言のようにぼんやりと天井を見上げて。世界中の女の子が憧れるような台詞に舞い上がるより先のことを想像してしまったのはそれほど眠れない夜が続くことに苦戦しているからで「ダムの帽子が拉げてしまわないように毎晩気を付けているのよ」彼が預けてくれたそれに共寝の相手として大いに助けてもらっていることを恥ずかしげもなく明かして、導かれるまま足を踏み出して。行先は彼に案内を任せるように足取りは控えめに、煌めくシャンデリアの光が床に反射して水面の上を歩いているような錯覚を覚えると夢と現実の境界線がまた揺らぎ、しかし胸の奥で芽生えた小さな不安は繋がれた手の温度がすぐに溶かしてくれる。廊下の壁面に飾り付けられたリースを目にしては視線をあちこちに泳がせて、初めて見る豪華な光景に踊る心について行き切れていないように表情はどこか朧げで掴みどころのない微笑みを浮かべるに留まり)メイドさんたちが飾ったのかしら。ユリの部屋にも一つ欲しいわ
>羊様
頼み事?メリーが、俺のために?
(間違っても易々と人に頭を下げるイメージなんて無かったから、意外も意外というように目をぱちくりとさせて。彼が誰かの手を借りてまでクリスマスプレゼントを用意してくれたのだと思うと手中のコンパスにより重みが加わる気がして、絶対に大事にするとぎゅっと手に力を込めて。魔法が本当に存在するだなんて事よりも前者の方に驚きを感じていたから、遅れるようにして「魔力…、魔法がこの国にはあるのか。ユニコーン――いずれ会ってみたいな」明らかに尋常の人ならざる彼らと生活を共にしているし、実際にチェシャ猫が姿を消す所も目撃している。薄々勘付いていたものをようやく言葉にしてもらえたことでむしろ腑に落ちるような心地で、この国一の魔法使いと羊に評されるまだ見ぬ人物に興味が湧いて、その時はメリーのくれたコンパスに助けてもらおうと決めて。頬にご機嫌なキスを貰えば仮面の下で目を細め、自分の茶目っ気を受け止めてくれるだけでなく真剣に喜んでくれるようなその反応に胸の奥はじんわりと暖かさを持って。最高のプレゼント、これ以上ない評価を貰った瞬間に少年のような無邪気さと男らしい誇りが同時に込み上げてきて「喜んでもらえて良かったよ」飾り気のない本心を真っすぐに伝えて。出発の合図には、もう一つ親友たる彼に贈るためのプレゼントを懐にしまってから早速コンパスに赤の城への道を教えてくれと囁いて。バサリと大袈裟にマントを翻し、エスコートのために肘を曲げ水平にした腕を差し出し)赤の城でもどこでも、俺はメリーのアリスとして胸を張って立つ。自慢されるに足る男でいてやろうじゃないか
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