匿名さん 2025-09-07 22:09:43 |
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(彼の説明を聞いて一応は納得したが、どうにも解せなかった。イルカにできるパフォーマンスといえば、精々飛び跳ねることぐらいしかないだろうと思っていたからだ。彼の言葉に頷くと、どうやらショーが始まったようで視線を前へ移す。係員の合図に従って3匹のイルカが軽快に泳ぎ、ボールを突いたりしている。思ったよりスムーズにショーが進み、関心が高まる。イルカ達はタイミングを揃えて同時にジャンプしたり、螺旋を描くように泳ぎ、また同時に飛び上がる。ご褒美に餌が貰えるからとはいえ、ここまで一糸乱れぬ動きが出来るものなのか。百聞は一見にしかずとはよく言ったもので、実際にショーを目の当たりにすると、目の前の光景に圧倒され、前のめりでイルカショーを見ている。途中で彼の視線を感じて、視線を彼へ戻す。そして彼へ今の興奮を伝えようと口を開く)
湊くん、湊くん! みんな乱れることなく動いていますね! あっ、ほら。またジャンプしましたよ! 凄いですね!
(普段ならばもっと語彙を余すことなく使い、この光景を形容しようとするだろう。だが今の自分はそんなことも忘れてしまうぐらいに、イルカショーに夢中だった。幼い頃から人並み以上の娯楽は与えてもらってきたが、そのどれも今となっては思い出として記憶にすら残っていない。今までは単に激務がそうさせたのだと思ったが、どうやら違うらしい。ずっと独りだったからだ。楽しい時間を共有できる存在がいなかったから。だが今は違う。彼という何者にも代え難い存在が傍にいてくれるのだ。そんな自分の喜びを代弁するかのように、イルカたちは楽しそうに水中を泳ぎ、飛び跳ねる。リングをくぐったり、係員を背に乗せたり──イルカたちの一挙手一投足に目を奪われ、こんなに楽しい時間がもっと長く続けばいいのにと心の中で思う)
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