匿名さん 2024-12-07 14:41:27 |
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諦、念……。……お祖母様も同じ眼をしておりました。
( 新たな世界へ手を引く声は普段と打って変わって重く、禁忌と称した一言がまるで杭のように心を穿つ衝撃に双眸を大きく見開いて。その海には隠しきれない痛みがありありと浮かび上がり。道理を理解出来るからこそ生まれる心痛を抑えるように唇を引き結んで俯いた拍子に一筋の髪の毛が鼻筋へはらりと垂れた。……きっと、姉達が語る人魚の幸せは陸の世界に存在しないだろう。女王である祖母に自らの意思を告げた時も決して喜ばず『何の因果かしらね』と淡々と受け止めるのみで、口数少なく伏せた目が何よりの証明だった。それでも私は、あの一瞬を見過ごして過ごす数百年を想像出来ない。ふるふると頭を振り沈黙を破る答えの輪郭は、諦念を拒み無垢を内包した憧れで縁取られたまま、心臓に手を添え、浮かべた口元の弧は先程よりも緩やかで、しかし一層強く見つめる瞳で違える事のない誓いとし。──この時の私は知らない。告げた願いが彼が踏みしめる死に水よりも残酷で、その心に刻まれた古傷の深さを、今はまだ知らない )
それでも私は、私の想う太陽に笑って欲しいのです。──痛みも制約も乗り越えてご覧にいれましょう。そして、願いが成就した暁にはこの魂の全てを海の魔女様に捧げます。一片も欠けることなく、貴方様のものになりましょう。……若輩者の魂でも、きっと何かのお役に立つはずです。
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