匿名さん 2024-12-07 14:41:27 |
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キミが隣にいるからだ。…──知ってるだろ。( 胸騒ぎを見透かしたような海の音と、見開いた蜂蜜色の瞳を前に幼き約束を形作っていた儚さに遅れて気が付く。そうだ、たとえあの日がどれだけ美しくても、いつまでも抱え続けてはいられない。それは、懸想を抱きながらも数々の思惑を前に足掻き自己を作り替え、軈て呪いと共に忘れてしまった己がよく知っている。『 いや、何でもない 』愁いも嘘もない笑みで伝えようと、していたのに。先に微笑んだのは、……俺の世界に希望を灯すのは、いつも彼女で。其れがどうにも気恥ずかしくて嬉しくて、瞠目した顔を背け長年抱えた想いの一端を弱々しく呟き。再び踏み出し始めた境界線の向こう側で彼女が微笑むのなら、何度だって魔法を掛けに行こう。そう強く想いを握り締める事が出来たのは、今目の前にいるキミと他でもないあの二人を見たからだろう。──もうあの頃のように無邪気に踊る事は出来ないけれど。小指の代わりにグラスをそっと掲げ、貴族社会を生き抜く誓いの代わりに友人たちへの最上の祝福を。貴方が隣に居るからこそ、あの頃の面影を宿したペリドットの瞳を淡く輝かせてキミへと捧げた微笑みは、やがて僅かに赤らんでくしゃくしゃと爽やかな青年の笑顔へと変化する。嗚呼、この想いが実らなくたって構わない。キミが、この先もずっと心から笑えているならそれでいいんだ。──此処より少し遠くで、ざざんざざんと流れる波の音と共に海辺の妖精たちが敬愛する主へ向けてか、それとも今この時間を生きる全ての者へ向けてか、祝福の笑声を響かせていた )魔女殿と彼女の幸せが末永いものであるように、キミの未来がうららかな陽だまりが、安らかな月明かりが絶えず降り注いでいきますように。───嗚呼もう、駄目だな……! こんなに浮かれてたらまた兄上に心配されてしまう。
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