名無しさん 2023-10-18 21:42:16 |
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>>247様
差し伸べた手を、彼女は掴んでくれた。その手からは彼女の流した……いや、自分が流させた血の感触と、温かな体温が感じられた。彼女を起こし終えた後、右手の掌を見つめる。自分の流した血と彼女の流した血が混じりあって、黒くなりつつあった。ふと顔を上げれば、そこには彼女が何かを取り出して上に放り投げる姿があった。何だろうと思ってその投げられた物体を見上げれば、それは炸裂音と共に周囲に煙を撒き散らした。一体これは、という疑問は彼女の言葉によって即座に解消された。彼女は、自分を見逃すというのだ。何度も殺そうとした筈の相手を、生きてはいけない筈の化け物を。
「……やっぱり、良い人……ですね。エレナさん」
自分は他人と傷付け合うことでしか生きられない存在。生きているだけで、周囲の人に危害を加える文字通りの害悪。そんな自分を、見逃すと。何度も何度も感じていた事だが、彼女は……やっぱり良い人だ。そんな良い人に、“あの時の判断が間違っていた”などと後悔させる訳にはいかない。だから誰かを傷付ける行為とは、距離を置かなければ……。今まで身勝手な理由で散々他人を傷付けた癖に、今更中断するなんて随分と虫の良い行為であることは自覚している。しかし積み重ねてきた罪の清算は彼女がしてくれる。自分が出来ることは、清算が行われるその日まで彼女に後悔の念を抱かせないことだ。
「ごめんなさい、一つだけ頼みがあります。もし私を殺す時が来たなら……ただ頭を撃ち抜くのではなく、あなたの思う最も残虐な方法で私に苦痛を与えてください。今まで積み重ねてきた罪に対する罰を、私に刻み付けてください……」
それだけ言い残すと、彼女に言われた通り小走りでこの場から逃げ出した。
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