29340 2023-08-01 10:16:20 |
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(榊)
─手を離しては、いけないよ。
(自身の手に乗せられた彼女の手を優しく握り、微笑んだままそう忠告してから先導するようにして社の外へ足を踏み出す。神社の周辺に生い茂る森が冷たい夜風に煽られてガサガサと揺れ、彼の草履が土を踏む足音がやけに大きく響いていた。麓周辺まで彼女を連れて行ってやり、ちらほらと民家の立ち並ぶ住宅街が見え始めた所で彼は手を離し、「─さあ、お行き。久方振りに人と話せて楽しかったよ、嫌でなかったならまたおいで」と一際澄んだ、凪のような声で告げては今しがた降りてきた山道の方へと歩き始め)
(ジュリア)
小説の中の人間、だって?とんでもない!何せボクはこの通り、ここに居るじゃないか!
(『彼』は驚いたように瞳を丸くし、自身の胸をどん、と叩きながら声を上げる。どうあっても貴女がワトソンである、という主張を曲げる気はないようで、貴女の手を再び引き寄せると「さ、帰ろうか?ワトソン君」今までの話を聞いていなかったかのように事務所─小説の中ではベーカー街221Bであるが─に向けて足を進めようとし)
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