29340 2023-08-01 10:16:20 |
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【 春原 美月 】
─── ここに…。
( 此処に住んでいる。彼のその言葉に呼応するように木々たちが騒めき、其れらの間を縫うような少しだけ冷たい風が美月の頬と柔らかなブラウンの髪を撫でる。…こんなところに人が住めるのかしら。失礼だとは分かっていてもどうしてもこの社に人が住んでいるとは思えず、それでも穏やかな夜のような彼の笑顔は悪人には見えずに美月の警戒心はほろほろと解けていき。と、此方を麓まで送ってくれるという彼の提案にぱ、と表情を明るくしては「 本当ですか?実は少しだけ帰り道に悩んでいて。ご迷惑でなければ、お願いします。 」と深深と丁寧に頭を下げては、此方に差し出された男性なのにしなやかで美しい白魚のような手に自分のちいちゃな手をおずおずと重ねて。 )
【 藤宮 花名 】
シャーロック……ホームズ……。
って、物語の中の人じゃないですか。推理小説の…ロンドン?のお話ですよね。
( てっきり麗人の知り合いの名前だと思っていた『ワトソン』は、世界中で知らない人はいないのではないかという推理小説の登場人物のことだったらしい。花名はキュ、と端麗な眉を寄せては自らをシャーロック・ホームズと自称する目の前のヒトも、それから確か小説では男性だったはずのワトソンをなぜ自分だと呼称しているのか分からずに、悩ましげに眉を寄せたまま「 私の名前は藤宮 花名です。両親と共に日本人ですし、海外旅行はハワイにしか行ったことありませんよ。 」と、何故だか此方が間違っているような気にすらなってしまうような自信に満ち溢れた彼女の海の色の瞳をちらりと見つめて。 )
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