グラサンオールバックの悪魔(♀) 2023-07-02 08:48:30 |
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まあ!ふふ、アハハッ。かぁわいい。
私もその場にいたかったわ、きっととっても……素敵な瞳をしていた。
( なんと、彼女曰くあの男は最後に自分の存在を求めていたらしい。憎しみと焦燥と落胆に塗れた真っ暗な空洞のようなあの目が、まさか最期は自分を求め悪魔に脅えていただなんて。それは嘸かし見応えのあるものだっただろうとアリシアはぞわぞわと背中を駆け上がってくる悦楽に思わず天使様とは言えない下卑た笑顔を浮かべてしまい。嗚呼これだから欲望に忠実なモノが大好き、自分勝手に掌を返して天使に付け入ってこようとするあの可愛らしい瞳が酷く愛おしくて壊したくなるほどに。もうスッカリ額の傷の痛みなんて気にならないほどご機嫌になったアリシアは、笑いすぎて出てきた涙をそっと指先で拭いながらもふといつも自分と彼女の間にある黒い障壁に手を掛けた彼女にぴたりと釘付けになり。漆黒の革手袋が障壁のブリッジにかかり、そのまま少しだけ押されればきっと見ることがないだろうと思っていた障壁の先には燃えたぎるルビーのような、はたまた鮮血のような、赤い、赤い瞳がこちらを見つめており。先程の男の最期を聞いた時とは比にならないくらいのぞわぞわとした感情が湧き上がり、真白の腰に粟肌が立つような心地すらする。恐怖ではなく、別の何かとして。其れがキュ、と細まるように歪んでは此先は有料だと嘯く彼女の言葉にハッと我に返っては、アリシアはまだその湧き上がってくるゾワゾワとした気持ちを隠すことなく薄く笑みを浮かべ 「 きれい、きれいだわ、すごく。…その光で溶けてしまいそう。 」とたどたどしく感情を伝え。─── 欲しい、此れが自分だけを捉えて求めているのが見たい。純白で真っ黒な天使は、その美しいかんばせを情欲に歪めながら目の前の赤い光を湛えた悪魔へと手を伸ばして。 )
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