グラサンオールバックの悪魔(♀) 2023-07-02 08:48:30 |
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…アー…だな。
(ジャスティスはアリシアに髪を撫でられると若干眉を顰めるものの、視界を遮る心地良い暗さに目を細めた。──嗅ぎ慣れた、夜の匂いがする。そう意識した途端に襲ってくる、心地良い全身の倦怠感に身を任せ、ジャスティスは瞳を伏せた。─遠くから自身を呼ぶ同僚の声と、罪人の阿鼻叫喚が聞こえてくる。上等な黒いスーツ、今と違ってまとめることもなく伸ばしっぱなしの乱れた金髪。どうやら、コキュートスに勤務していた時代の夢を見ているらしい。自身の手には細かな字の書かれた本が載っており、椅子に腰掛け、断末魔を上げる罪人たちを見下していた。横で同じように本を持つ同僚と時折会話を交わしながら、本に何かを記入している自分がいる。部下らしい高等悪魔が自分の方へ駆け寄ってきては見るも無惨な姿の罪人を差し出しながら『コイツは廃棄か、それとも返還か』と問いかけてくる。廃棄だの返還だのと判断を告げ、また本に何かを書き記す自分。─夢現の中でジャスティスは悪態を吐いた。「…見たくも、思い出したくもねェ」シャープな形の唇から吐き出される悪態は、どこにも届くことなく消えて)
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