神出鬼没　/　締切

珍しいじゃなくて男前って言え。──いずみさん？ンだそりゃ…普通に和泉守でいいじゃねーか。
( 名に対し珍しいという感想で済んだことに、ホッとしたのも束の間。仲間達からは『和泉守』や『兼さん』と呼ばれる事がほとんどな為、聞き馴染みのない渾名にまぶたを何度か震わせて、驚きの意を示す。特別呼び方にこだわりは無いものの、他人の苗字のようなソレに、慣れていない事もあってかイマイチ自分が呼ばれているという実感がせず。話題が変われば、もう離れて大丈夫だろうと判断し、手入れの行き届いた艶やかな黒髪を、揺らしながら少女の前から退き。鍛冶場は己が生まれた地であり、まさか相手が竹刀を握るキッカケとなった場所でもあったとは思わなんだ。意外そうに鍛冶場を見ていた碧眼を元に戻し、再度明るい笑顔を眼に映し。 )
鍛冶場…？へえ、そりゃあまた変わってるっつーか……、剣道の試合見て興味持った、とかじゃないんだな。