匿名さん 2023-03-24 20:11:47 |
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…べつに、水瀬さんと出掛ける時と変わんないすよ。
( 少なくとも此方にとっては唐突に出てきた同窓会の話題が、彼女の気を紛らわすための策だったとしたら、結果はある程度成功と言って良いだろう。上ずった声にふと目線を向けた先には、喫驚を露わにした相手の顔があって。未だ気掛かりそうな表情は消えていないながら関心はそちらに流れたようで、改めて確認するかのごとく鏡の向こうの双眸が己の体を撫でてゆく。おろし立ての服に勘づいたわけではあるまいが、普段とは心持ちのやや異なる装いを目敏く見抜かれ、瞬時に湧き上がったのは嬉しさでも気恥ずかしさでもなく、隠した想いのもどかしさ。今日これからの用事が楽しみなのも、それを意識してコーディネートを組んできたのも間違いではないとはいえ、想い人との〝デート〟の時にだって同じかそれ以上の厳選をしているわけで。知ってほしい邪心と知らずにいてほしい願いとが綯い交ぜになった果て、聞こえるかどうかという小さな呟きで心の澱を吐き出し、返事は求めず筆を運ぶ作業に戻る。一方で、別のことへ注意が奪われている様子の少女は多少不自然な繋げ方で持ち物からハンドクリームを取り出し、自身へマッサージを提案して。訴える眼差しの真摯さから、これが言い出せずに落ち着かなげだったのか?と疑問符付きの解釈をするも、新たな技術を学ぶ姿勢には「へぇ…」と素直な感心の声を洩らし。「じゃあ、先にメイクだけ仕上げるすね」了承代わりにそう伝え置いて、以降の会話と引き換えに時間の余裕を手に入れては、ヘアアイロンの電源を入れてすぐ、隣の椅子へ腰を下ろす。座面を横向きに90度回転させ、甲についた色とりどりの粉をウェットティッシュで簡単に拭ってから、手をカウンターの上へと差し出して )
…手、空いたんで、ご自由に。お願いします。
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