匿名さん 2023-03-24 20:11:47 |
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( 自宅のチャイムが鳴らされたのは、そろそろ外出しようかとオフホワイトのスプリングコートを羽織った折。来客を報せる呼び出し音に、卒業式を終えた頃合いであろう少女へ連絡するべく手に取ったスマホから顔を上げ、ポケットへ滑り込ませながら玄関に足を向ければ、少し余らせて巻いたキャンバスベルトの先が黒のワイドスラックスの上で鷹揚に揺れて。こんな時でも適当な靴を選べないのは己の性か、律儀に靴箱から合わせると決めていたドレスシューズを取り出し、その一方で向こう側で待つ誰かの正体は気にすることなく、隔たるドアを押し開く。飛び込んでくる青空の鮮やかさに少しだけ目が眩んで、双眸を俄に細めるけれど、それはほんの一瞬のこと。眼前に見せびらかすように卒業証書を構えた相手の姿を認めては、喫驚のため扉を開いた姿勢のまま数秒の沈黙の後、「…おめでとうございます。ごめんなさい」と簡潔な返答を。もしそれに不満げな声が洩らされたのなら、ドアノブにかけていた手の代わりに、緩く腕を組んだ自分の肩と側頭を横の面材に預け。第3ボタンまで外したグレー×白のストライプシャツの襟元、覗くカーキインナーの上でいつものシルバーネックレスが微かに音を立てると同時、言い含めるようでいてどこか不貞腐れた声色で、変わらぬ壁の存在を語って )
…、高校は卒業しても、水瀬さんアイドルじゃん。
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