Miss Mystery(〆)

【安室 透】


いきなりのことで驚かれましたよね。
…僕は警視庁公安警察、本名を降谷零といいます。
今日は、優菜さんに捜査の協力を依頼する為にここに来てもらいました。実は、ポアロでパソコンを扱うあなたの姿をずっと見ていたんです。僕も潜入捜査などの任務をこなすに当たってパソコンの扱いには少々詳しくて。

ハッキング
って知ってますか。

( 当たり前だが相当困惑した様子の相手に、僅かに苦笑する。そりゃあさっきまで、何の疑いもなくポアロのバイトだと思っていた人物が、じつは警察でした、なんてそんな話を誰が想像するだろうか。警察手帳を胸元のポケットに仕舞うと、改めて本当の自分の名を相手に告げ、その目的について今から話をしようと切り出し。彼女のことが気になったのは、パソコンを操作しているところを初めて見たとき。複雑な文字の羅列の並ぶ画面、迷うことなく動く彼女の指。自分も少し齧った程度だが、これは紛れもなく｢ハッキング｣と呼ばれる違法行為だと理解してからは、ずっと彼女のことを観察してきたわけだ。しかしながら、彼女もしていることが法に触れていることくらいは分かっているだろう。素直に話すとは頭から思っていないため、伺うような口振りで｢ハッキング｣という単語を口に出せば、どのような反応が返ってくるのかじっと見て。)






【早乙女 なつき】


そうね。手強いもの、例の組織は。

…以前ジェームズから聞いた情報とそのまま。全く同じ内容。

( 念には念を入れた確認だとすれば、それくらい組織の存在には気をつけなければいけないということなのだろう。実際どこに組織の目があるかは分からない。彼の言葉と忠告に頷き。彼の話す内容を1字1句逃さず聞き取り、頭の中にある上官から貰った報告書となぞり合わせながら確認をする。ある程度の量の書類であれば、暗記をすることも容易。記憶には自信があると、話し終えた相手に、内容に相違無いことを伝える。然しながらここまで情報を入手しているのは凄いことだ。雲のように掴めない組織。彼が組織に潜入していたからということもあるだろうが、これまでのスパイたちが数々の犠牲を払ってきたから得ることができた情報も多い。それでも、これまでFBIでは情報操作について仕事を任されてきた身としては、不謹慎ながらもわくわくしているところもあるのが正直なところだ。次に相手の言葉が出るのを待ち。)