匿名さん 2022-08-21 15:03:38 |
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(不意を突かれたといった風情で転び出た台詞に、気付けば一切の懐疑を感じさせぬ真摯な面持で小さく頷いていて。それ程までに供された品は味蕾を刺激すると共に関心を惹き、主人が寝台へと腰を下ろす間にも二切れ目を切り分けるべく握り直したナイフとフォークを皿の上へと向ける。埃一つ見当たらない机をパン屑で汚さぬよう留意しつつ、普段より慎重に切り分けては口へと運び、また切り分けては口へと運びを黙々と繰り返す最中。傲然と足を組んで見せた割に温情のこもった言葉に顔を上げては、身体の不調故に朧げにしか蓄積されていない今朝方の記憶を手繰り寄せる。〝ぶりょう〟の意味はよく分からないながら、すぐに〝不要品〟が空中から出現した画材のことを指しているのだと察すれば、此処でそれを使用する許可が下りたのだということにまで理解が及び。しかし折悪しく、窓の外の太陽は完全にその姿を隠してしまおうかというところ。本日分の仕事を完遂できていない後ろめたさもあり、ランプの灯を浪費してまで取り組むべき事柄ではないように思われればそっとかぶりを振って。それから先程までフレンチトーストが存在し、今は少量のパン屑が残るのみとなった皿へと視線を落とすと、何処となく嬉し気に瞳を揺らしながら辞退の句を紡ぎ)
……いえ。あの画材は、回復してから使わせていただきます。
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