匿名さん 2022-08-21 15:03:38 |
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(彼を描いたのはこれまでに一度きり、それも顔の見えぬ後ろ影で。折に触れて瞳に映した赤と黒のコントラストを切り取る一葉は、他と同様画材を乾かしがてら本棚へと収められ、今この時も裏表紙の如き堂々たる背を極小の訪問者達へ見せていることだろう。しかし写実でなく心象風景を描き起こす手法が災いしてか、情景の中でローブが翻ると途端に表情だけが夢の記憶のように曖昧模糊として、生活に於いても意識に於いても中心に在るその人の肖像は未だ一向に描けぬまま。それでも変わらず気概は内奥に持ち続け、渡った先の手中で金砂のような顔料が音もなく平らな表面を崩し、此方の心算など知る由もない怜悧な双眸が瓶の奥に現れれば、精察する様子にじっと視線を注ぎ両者を比べ合わせ。静かに動く金眼を蜜や琥珀に喩えたくなるのは、とろりと液体のように動く微細な粒子のせいか、それとも採取元である魔物の甘い芳香のせいか。やがて尚も合点のいっていない訝しげな面持ちが小瓶から自身に向けられ、問いには率直に答えつつも、珍しい決定に対する追究に何か懸念でもあるのだろうかと言葉尻と眼差しを徐々に弱らせた折。果ては心なしか眉尻まで困らせたなら、一部始終を傍観していた店主が失笑するように奥の暗がりから微かな息遣いを洩らして)
はい、描きたいものにこの色が必要……で……?
(/大変お待たせいたしました……!お返事を頂戴する前ではありましたが、期限に関しましてご寛恕いただけるようであれば上記とこちらはお蹴りください。信用に欠けると判断された場合はお手数ですがその旨をお伝えくだされば幸いです……!)
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