匿名さん 2022-08-21 15:03:38 |
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……まぁ、及第点だな。まだ時間に余裕はある、好きに選べばいい。
(自身と奥の店主を惑う青緑の瞳が行き来して、慎重に慎重を期した末ようやく零された言の葉に先刻まで上方から掛けていた圧を一時失念し。控えめながら正面に重なる瞳の奥にも、魂の欠落した繕いの人形ではない確たる相手の意志を感じ取れ――ふ、と甘く金色の蜂蜜が蕩けるように自然に細められた双眸と、ごく僅かな傾斜ながら柔く綻ぶ口許。刹那に優しげな微笑を安堵と共に象ったかんばせは、次の瞬きの間には幻想が如く一転した常の渋面にて素っ気ない返答を告げ、腕組みを解いて元の商品へと視線を転じており。己の了承を得て即座に彩り豊かな小瓶へ吸い寄せられる子供らしい背を盗み見ながら、内心では密かにやれやれと苦悩を孕む吐息を。出会った当初はまともな意思疎通すら難儀していたというのに、それに加え子の自主性の育み方や適切な対話術などと、最早どこぞの父兄めいた懊悩をも交えればいよいよ自身の手には余るというもので。此方の胸中など知る由もないだろう当の本人はといえば、程なくして内なる高揚に色めき立つような素振りのもと身を反転し、美しい黄金の色彩を閉じ込めた小瓶を自身に差し出して。特に目新しい魔術式が施されている訳でもない画材類に己が関心を引く要素はないとはいえ、万事恬淡とした少年からそうも欲念を引き出したとあっては流石に容器内の煌めきを注視せざるを得ず。〝禁忌の果実〟、その魅了の魔力を孕む金色の輝きと芳香により獲物を誘引するという効能は他へと姿を変えてもなお健在ながら、特段他より遥かに優越しそれを選出する意図を依然として掴みかねては、少々不思議げに片眉を寄せて差し出された品を受け取り。手慰みのように数度手中で角度を変えながら同色の眼を軽く眇めるように検分すると、店主へ購入の声掛けを試みる前につい純粋な疑義を立て)
……これがそんなにも気に入ったのか?
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