匿名さん 2022-08-21 15:03:38 |
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…………はい。
(これまでは自我を晒さない事で大人達に褒められたものだが、彼に限ってはそれが却って不興を買うらしい。品評と言うよりは取捨の色濃い、自分の事くらい自分で決めろとでも言いたげな素っ気無い返答に残念がる素振りも見せずこくりと頷き、ならば店員推薦の衣服に決めようと此処での用事の完結を予感した折。面白く無さげに細められた双眸と共に堂々巡りの問いが寄越されては、多少言いづらそうにこそすれ、不思議な人だなとその意図をひとつも理解せぬまま正直に応じ。それから姿見の中に居る質の良い服に包まれる己を異世界でも覗くかのように眺めると、強いて言うなら、とやや上方へ顔を向ける。このカーテンが外套になれば、きっと高い服を汚さずに済むだろう。――しかし勿論引き千切って身体に巻くわけにもいかず、店員の勧めに従い品物を見回るらしい主人の後を、右へ左へと緩慢に首を振りつつ大人しく着いて行く。もう三日分も揃えたのにまだ買い物を続けるのかという小さな衝撃は、やがて自身が希望を出すまで店を出ないつもりなのではという迷妄にまで膨らみ。だからと言うわけでも無いが目に付いた品を気紛れに手に取って行くと、漂着するように辿り着いたのは装飾品や簡単な武具防具の並ぶ一角。翡翠石の嵌ったループタイやら吊り下げ式の短杖ホルダーやらに他より長く視線を留めては、ふと面を上げた先の足元まであるドレープの効いたローブに思わず「カーテン……」と小さく洩らし)
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