あまり先に行かれると困ります、 (霧の中は冷たいものだと分かっていてもなお寒すぎると感じる程、この白い空間は身体を芯から冷やすようでぶるりと小さく震えて。深い海の底へ潜ったことは無いけれどきっとここのように寒く暗く寂しいのだろう、どうしてか陸を歩いている筈なのに酸素を渇望する息苦しさすら覚えた時、彼が車内で呟いた“夜の海”という単語が脳内を過ぎってずっと先へ歩いていってしまいそうな相手の背中へ手を伸ばす