____５秒後に、（ 〆 ）

（ ／ かしこまりました。こちらは今現在特別ここに行きたいなどはありませんから、一先ずプラハ、ドバイの順に原作映画の様なアクションを投じていければと思います。せっかく華やかな装飾のある大聖堂を西方面に抜け出してしまいましたが、教会や三ツ星ホテル、サッカー場などが近辺にあるようですので、お好きな位置に誘導してくださいませ。それではよろしくお願いします…!! ）





（　チェコ・プラハ。荘厳なる聖ヴィート大聖堂の南塔、展望台に続く出入り扉のすぐ隣にて。傍を行く観光客は皆、プラハ城を一望できる景色見たさに気を取られているのだろうか、スーツ姿の初老の男が静かに崩れ落ちたとて、呑気にも気に留めやしない。男が完全に床に伸びる前にその身を受け止め、横のニス塗りの長椅子に居眠りの如く座らせる。彼の運んでいたアタッシェケースを我が物顔でするりと手にすると、何事もなかったかのように、元来た287段の石段をやや足早に降りて行く。
これにてファイルは回収完了。閲覧許可がないので中身を確かめてはいないけれども、中に埋め込まれている特殊チップが手持ちのガジェットに確りと反応している。これをIMFプラハ支部に届ければ今回の任務は終わり、その筈であった。地上に戻り、プラハ城の正門から出た時点で、幾人かの男からの臭う視線を感じ取るまでは。
顔だけは如何にも仕事に忙しいホワイトカラーの素振り、だが観光客を避けて進む長い脚は次第に駆け足へと変わる。フラチャニ広場を通り過ぎるころには追っ手も走り出しており、自身も必然と全力で逃げる羽目になっていた。あと少し、あと少しだ、すぐ目の前の路上の車列に自分の停めた車がある。ポケットの中のキーを押して遠隔解除すると、至急この状況を抜け出さんと、フロントドアに手をかけよう　）