鬼神通(〆)

一見さんだからねェ…初回料金で安くしとくヨ。
(喉の奥で押し殺すように笑い、代金を告げてから思い出したかのようにポケットから包装された色彩豊かなキャンディを取り出し、相手の手の平に載せて「コレはおまけネ。ウチで最近売り出してる、「ハッピー」になれるキャンディだヨ。」くすり、微笑む)

ラッキー、ありがたいわ。…で、おまけ、ね。おにーさんのいってる"ハッピー"は肉体的な方？それとも精神的な方？(想像より安い値段におっとなりながら袖から財布を出すと指定された金額を支払って。財布と共に瓶を袖の中にしまうと、手のひらに転がる飴を摘み光に透かすように掲げると目を細めながら面白そうに口角を上げて)

まいどあり。…ん～、詳しくは言えないケド。食べればあっという間に桃源郷が見えル…とだけ言っておくヨ。
(はぐらかすように目を細め、長い舌をちろりと出すと「効果は…そうだねェ、一個食べさせればどんな子でも言うこと聞いてくれると思うヨ。」また薄く微笑んで手をひらり、振って)

あは、こっわ。まぁ、有難く貰っていくよ。これからもナカヨクさせてもらいたいしな。(効果の高さにあは、と声を零せば飴をしまい。目当ての物も手に入り、おまけも貰ったことに嬉しそうに微笑むと「またね、おにーさん」と身を翻し店を出て)

…また来てねェ～。
(扉がばたり、閉まれば男は瞳を伏せた憂鬱そうな表情で煙管の煙を燻らせる。立ち昇る紫煙が天井に染み込み、彼は暫くぼんやりとしていたがすぐに裏社会の人間だと大声で叫んで回っているような格好をした男や、どう見ても目つきの危ない、足元のふらついた娼婦、果ては目に生気のない子供などが店を訪れては目当ての品を買い、出ていく)

(自分の店に戻ると地下にある部屋で、部下に買ってきた薬やおまけの飴を渡し、己はそこら辺の椅子に座る。散々と叫ぶ男女が薬によって息絶えるように眠り、またある者は恍惚とした笑みを浮かべ部下に擦り寄る姿を確認すると満足げに頷いて。数日後、手に鞄を持ちながら店に足を運ぶとニコニコとした笑みを浮かべながら中に入り)
やぁ、おにーさん。また来たよ。

…あ～、こないだのお客サンか。ド～モ。
(またひらり、手を振ると薄笑みで来客を迎える。「お薬の効果、どうだったァ？よく効くでしョ？ンで、今日はまた何かご入用？」眉を下げ、目を細めつつ眼の前の来客に問い、もう手近の棚からガラス瓶を取り出しつつ笑う)

薬もおまけもよく効いて、少し怖いくらいだったな。あ、んで今日は先に買取お願いしたいなぁ。これ、買い取ってくれる？(芝居がかったように両手を広げため息を零すと、鞄の中から拳ほどの白い石のような塊を数個と枯れ木を取り出し机の上に置いて。「竜涎香と香木って言っていたかな。趣味じゃないから貰ってくれると有難いんだけど」と問いかけ)

くふっ、そりゃ良かったネ。
いいヨ～。オニーサン香木とか大好きだし。
(口から煙を吐きつつ笑うと二つ返事で頷き、「支払い、コレでいいかなァ？オニーサン、現金は持ち歩かないんだよネ。…あとコレ、ネ。」と机の引き出しから子供の拳ほどある色とりどりの宝石を取り出すとごろりと机に並べる。その横に例のキャンディを置き、また口から煙を吐き)

硝子…じゃないな、本物か。よくまぁこんなデッカイの手に入るねぇ。(自分では持て余してしまう品物を引き取ってもらえると安心すると、代金の宝石に目をぱちくりとさせて。顎に手を当てまじまじと見るとその大きさに少し驚いたようで。だが、手に入るなら有難い、と宝石を鞄にしまうと飴を指さし「なに？今日もおまけしてくれんの？」と聞いて)

ま、オニーサンには色々とツテがあるからネ。今日のは買うならドウゾ～って感じかナ。
ホントは高いんだヨ？コレ。
(何ともないように言った後、指の間に挟んだガラス瓶をコツコツと軽くぶつけ合わせ、ちろりと舌を出して妖しく笑う。「…ま、お客サンなら問題なくて払えると思うけどネ。ウチは生きてればお客サン、死んでれば商材だからネ。無駄がなくて良いでショ？…で、今日はどうするノ？」さらりと言い放つと煙を吐きつつ首を傾げ)

確かに無駄がなくて便利だねぇ。何かあったら頼もうかな。あ、んで今日は買おうか、睡眠薬と毒薬と、痺れ薬ってあるか？飴は10粒前後欲しい。(相手の言葉に確かにと頷くと、今日買おうとした品物を告げて。前回の来店で聞いた効能ともしあればと思うもの。店で使った時もその効き様は信頼に値するものだったので多めに仕入れられれば…、とにっこり笑い)

痺れるヤツとキャンディ十個ね。ちょっと待っててヨ～。
(注文を快諾すると一旦奥へと引っ込み、すぐに自分が吸っている黒煙管の色違いと煙草、それと黒い小箱、キャンディを無造作に詰めた紙袋を持って戻ってくる。「痺れるヤツ、一応強いのは煙草の方ネ。でも味にクセあるから苦手なら止めといたほうがいいヨ。効果は普通で当たり障りない味なのは箱に入ってる方。モシどっちか選べないなら、二個とも買ってク？」カン、と机の端に煙管を打ち付けて灰を落としつつ、また火を点けて吸い)

味で違いが出るのか…変に勘づかれると面倒だから小箱の方貰おうかな。(どうせ自分で吸うものでは無いのだが、癖があるのならなるべく控えたい。そう頭の中で考えると小箱の方を指さし、こうすることを伝えて。代金を支払おうと財布を取りだすと、ついでに白地に牡丹紅楼と書かれた名刺を取り出して)

くふ、ド～モ。
(薄く笑うと煙管を仕舞って代金を受け取り、添えられた名刺には小さく首を傾げて「ナニコレ？お客サンの職場？」細い指先で挟み、裏返したりしてまじまじと眺めていたが名前に覚えがあるらしく、しばらく考え込むような仕草を見せた後「…ああ、あの娼館ネ。ウチのお客サンに常連の人いるヨ。」と煙を揺らし)

その常連のお客さんにこの店のことを教えてもらったんだ。珍しいモノと店主がいるって。おにーさんとは長い付き合いになりそうだし、良ければご利用どうぞ？(この店のことを教えてくれた常連の顔を思い出しながら、受け取ったものを鞄に入れる。来た時よりもわずかに重く感じる重量に満足気に取っ手を握り、相手が手に持つ名刺の店名に空いている手の指を添え「楼主からの紹介状ってことになるから忘れんなよ？」と注意し)

くふっ、機会があればネ～。
(いつもの笑顔を崩さぬままひらり、手を振って来客を見送ると受け取った名刺を机の一番上にある引き出しへと仕舞う。「…商材の手入れしないト。」椅子から立ち上がり、奥の扉をぎいっと開くとそこには折り重なるようにして放置された性別も年齢もバラバラな死体があった。男はその死体のうちの一体を引きずるようにして更に奥へと放り込み、何やら作業を始め)

待ってるなー。(自分もひらりと手を振ると店の扉を潜って出る。路地には身寄りのない子どもやみすぼらしい格好の男女が蹲って座っていたり、無気力な目でこちらを眺めていた。自分はその中から青い目をした10代位の男児の腕を掴み楼に戻ると教育係を務めるお婆に男児を渡して、荷物を自室に置くと休憩をとる商品達のものへ足を運んだ。一人一人の体調や話を聞き終えると自室に戻って書類仕事を始めて。
また数日後、街を散歩していれば柄の悪い男どもに囲まれる。金目のものを狙われたようだがあいにく手持ちはなく、するりと横路地に入って逃げていれば見たことのある店を見つけて身を滑り込ませ)
や！悪いねおにーさん。ちょっと匿ってくない？

いらっしゃ～い。奥の部屋へドウゾ～。
(男は普段と何ら変わらぬ声色と笑顔を浮かべ、来客を奥の部屋へと促す。気怠げな雰囲気で煙管から立ち昇る紫煙を揺らしては扉の方を眺め、一応とでも言いたげに机の引き出しから柄に龍の装飾が施された短刀を取り出し)

さーんきゅー。(促された部屋へ行くと幅広い年代の男女の死体があり、おっ、と目を丸くする。大方臓器の売買にでも手をつけているのだろうと考えるが自分には関係ないと興味を失い、扉の死角になるであろう部屋の隅っこに移動して。そのうちここの店主はどんな人物なのだろうと興味を持ち考える。あの怪しげな商品や遺体をどこから仕入れ売るのか、不思議な人物だなぁと思考をめぐさせながら時間を潰して)