匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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通報 |
( いかなるときも冷静沈着な相棒が、こんなにもやつれて立ち尽くすなんて、一体どれ程の被害が出たのだろうか。それとも驚異の正体が未だ近くにいるのだろうか。それなら一人で行かせてしまったリズが危ない──いや、義理深く優秀な彼女のことだ。此方に何かがあればすぐ通報できるよう、安全な場所からきっと此方の様子を伺っているに違いない。ならばとっくに寝静まったここらの住人を避難させる方が優先か、などと。恋人の恐慌した内心を慮らず、明後日の方向へと思考を巡らせていたものだから。 )
……!? な、なにって……
( 耳が破れんばかりの鋭い怒声に、肩へ食い込む強い指先。突如浴びせかけられた激情に、思わず──なんだ、と。キングストンの市民たちに何の被害もないことへと、ほっと浮かんでしまった場違いな安堵は、優しく大好きな恋人より初めて向けられた剣幕から、心を守るための無自覚な逃避で。しかし、──どうして、貴方がそんな顔をするの、と。やっと激震が収まり焦点のあった表情から、今こうしてビビを叱りつけているのもまた、いつもの優しく繊細な恋人その人なのだと実感すれば。その憔悴しきった表情に、どうしようもなく胸が締め付けられるのは、愛しているのだから当然のことで。そもそも、なにか事件があった訳でもなければ相手こそ、どうしてこんな時間にそんな格好でここにいるのか。いや、彼の様子がおかしかったのはもうずっと前のことからだったか。愛しい人に健やかにいて欲しいだけなのに、一体全体どうしたものか。あくまでどこまでも静謐に、その憤懣遣る方ないといった怒りの中に、蹲るような怯えが潜むアイスブルーを見つめ返すと。最早怪我をした野生動物のような恋人自ら拒まれなければ、やつれてもなお美しいその薄い頬をそっと指先で撫でるだろう。 )
……ご心配おかけしてごめんなさい。
でも、……いいえ。ねえ、ギデオンさん。私はどうすれば良いのかしら?
こんなに大好きで仕方ないのに……最近は、全く伝わってないみたい。
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