匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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──……、…………。
( ガラン、と。ガラス製の瓶が木箱を叩く無機質な音、大好きな相手の突き放すような冷たい声音。気持ちが通じ合った春のあの日から初めて、二人の間に空いたその距離に──一切、そのまっすぐなエメラルドが揺らぐことはなかった。それどころか、一歩そのまま歩み寄り、「……“忘れてくれ”?」と投げ放たれた暴言を今一度呟くように反芻すれば。もしかすると、投げかけられたヴィヴィアンより余程動揺している男の表情を見て、小さく微笑みかけすらするだろう。 )
……"すべき"、だなんて。
少なくとも、私が"すべき"かどうかは自分で決めたい、かな。
( どれだけギデオンのことだけを見つめてきたと思っているのか。その頑なな表情が、言動が、文字通りの拒絶や嫌悪ではなく、彼が一人追い詰められている時のものだと云うことを、もし見抜けないと思われているなら心外だ。とはいえ、まさか本人がその正体を理解出来ていないとは流石に見抜けず、素直に信頼されていない、相談すらして貰えないほど頼りにされていないのだと誤解すれば。その口調や表情こそ穏やかに装えど、その大きな瞳を覗けば、恋人として、そして相棒として、その内心怒りに満ちていることは明らかで。しかし、今目の前で困窮しているギデオンを更に困らせるような真似がしたい訳では無い。故に、久しぶりに触れる頬へと手を伸ばし、体力回復の祝福だけを無言でかけると。到着した馬車の方へと向き直りながら、冷静に双方の冷却期間を提案したつもりで、ギデオンの表情を確認しそびれた程度には、頭に血が上っていたらしい。 )
しばらく家には帰りません。
どうせお力にはなれませんもの……私より"大切なお仕事"が終わったら、迎えに来てくださる?
( とはいえ、それから幾日たっただろう。駄々を捏ねて転がりこんだ先は、ギルドからほど近いリズの部屋。つまり、バルガスからいち早く居場所の特定はできるに違いない上、祭日の警備シフトにも毎日予定通り出勤している以上、必要以上の心配はかけていないだろうと云うのがビビの算段だったが果たして。ひとつ誤算があるとすれば、一見クールなようでいて、情に厚い友人の口の硬さを見誤っていた事で。 )
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