匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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(初日にもかかわらず、或いは初日だからこそなのか。キングストン商店街は朝から大いにごった返していた。笛や鈴、太鼓といった祭り専用の魔法楽器が絶えず奏でられるなか、行きかう人々が楽しげに笑い、店々の軒先で売り子がよく通る声を張り上げ、そんな賑やかさを突き破るようにして小競り合いや乱痴気騒ぎが早速聞こえてくる有様。道行く客は呑気なものだが、警備員であるギデオンたちは悠長にしていられない。ようやくひとつ解決しては、また別のところへ出動する、そんな状態が数時間続き。──しかしそのおかげで、相棒の明らかな変化にそう気を取られずに済んでいたのは事実である。以前なら執っていたであろう行動を相手が慎んでいることは、こちらもはっきりと肌で感じていた。表情こそいつもどおり陽気だ、だがまるで、ギデオンの知らないヴィヴィアンがそこにいるかのような気がして。身勝手な違和感を無言で押し流そうとするように、警棒を指示棒よろしくかざしながら無心で仕事に没頭し、平静を装い続ける。それが少し崩れることになったのは、昼休憩に入ろうとした矢先だった。道の真ん中で酔いどれている連中を仕事熱心なヴィヴィアンが見つけ、穏やかに退去させようとしたのだが。介抱を要求した甘ったれの傍らに、彼女がすんなり屈んだ時だ。「かぁわいいねえ、この髪型──」なんて言いながら、彼女の少しほつれたポニーテールに無遠慮な手を伸ばすのを、目の当たりにしたものだから。思わず反射的に、警棒で強く、それこそ“骨を折らない程度”の強さで打ち払っていた。「な、っにすんだよてめぇ!」と気色ばんで立ち上がる青年。どうやら足首の怪我とやらは大したものではなかったらしい、今さすっている腕の方が余程痛そうだ。周りの青年たちが顔色を変えて見守る中、顔を突き合わせられたギデオンも、「通行の邪魔だ」とぶっきらぼうな一言を放って威圧的に見下ろすのみ。「だからどくために脚治してもらってたんだろお!」と肩を怒らせる青年に、後ろから近くの店の親父が近づき、「やめとけ、この男はシェリー・グラハムの弟子だぞ……」と声をかける。誰だよそれ? と青年が怪訝そうに振り返るのを眺めながら、思わず顔をしかめてしまった──ヴィヴィアンの前で、彼女の名は極力出してほしくなかったというのに。耳に入らなかったことを祈りながら、親父も交えて話をつけ、その場はどうにか収まって。仲間になだめられつつ、去り行く肩越しに最後のガンをつけてくる青年からようやく目を離すと、呆れた溜息をつきながら相手の元に戻ってきて。)
……厄介だな。昼からこうじゃ、夜の部が思いやられる。
(/まずはご用事お疲れさまでした……!!
事務員の彼女を覚えていてくれたこと、気に入ってくれていたこと、大変嬉しく思っております。実は前々から密かに設定を温めておりましたので、おつまみ程度にご照覧くださいませ(ご感想などのお気遣いには及びません)。
●マリア
・2児の母であり未亡人。40歳。カレトヴルッフの冒険者だった夫が数年前に殉職したため、遺族救済措置として設けられている雇用制度を利用して事務員に再就職。その観察力・洞察力の鋭さを買われ、人事に役立つ様々な情報を密かにギルマスに提供している。
・表面的には冷静でたおやかな一般事務員。しかし、他人を使って手を回す形での問題処理が得意(ビビを付け狙っていた中年たちの左遷など)。このため、魔法などはほとんど使えないにもかかわらず、一部の冒険者に恐れられている存在。
・ギデオンの数少ないまともな女友達。18年ほど前は、友情の延長線上で何度か軽いデートをしたこともある仲。しかし例によって、彼の本質(亡きシェリーの面影を、当時はまだ無意識に追い求めていたこと)を見抜いた。その結果、互いに本気になることはないと早い段階で双方とも気づき、「尊重しあえる距離感でいよう」と話し合って今に至る。早い話が限りなく元カノ未満。パワーバランスはマリアの方が常々上。
・ギデオンがかつて預かったことのある「ギルド仲間の幼い子ども」とは、もうじき6歳になる彼女の下の息子のこと。やむを得ずギルドに連れてきた息子の面倒をギデオンが一時的に見る、ということが度々あった。上の息子は14歳で反抗期。
他のキャラクターについてもお褒めの言葉をありがとうございます……! アリスやバルガス、ジェフリー、受付カウンターの可愛らしい看板娘のことが当方も大好きですので、是非何かの折に裏話やこれから出したい要素などお聞かせください。
警備の仕事や裏での話はテンポ重視のダイジェスト進行とのこと、了解いたしました! 今回も詳細な心理・風景描写を心ゆくまで読み込ませていただきました、お詫びなどとんでもないです。ビビの辿る心情変化も彼女らしい力強さに溢れていてとても好きです……! こうしてイメージを共有してくださったおかげで上手く舵を合わせられると思いますので、此方こそ、今後ともこのような打ち合わせを是非よろしくお願いいたします。
そしてそうなんですよ……(ガッツポーズ)年上の男に無垢な恋をして猛アタックするという点ではよく似ているはずのビビとサキュバスとで、小さな違いの積み重ねから全く違う恋路を辿ってしまった、という対比を勝手ながら盛り込ませていただきたくて……! ギデオンとアーロンの「青い友情」といい、そこを巧みに見抜いて的確な言葉にしてくださるのがもう本当に嬉しすぎて……!!
アランの動向について詳しく考えていなかったのですが、是非主様ご提案のその方向でお願いします。ビビと同期というのも大賛成です! 名前、21歳という年齢、サキュバスによる誘拐事件の被害者だったこと、アーロンと同じ目の色・髪色・そばかす持ちであること・カレトヴルッフ冒険者であること以外は設定自由ですので、人物像や口調など、お好きなように扱っていただければと思います。ギデオンやビビが更に辿るであろう変化は、黒い館編に差し掛かった時にでもまた話し合いましょう!
日々の中に物語が溶け込みつつあると聞き、もう嬉しさが極まるばかりです。ご無理がないとのこと安心いたしました! 今後についてのご報告もありがとうございます。この先も、話したい部分についてはたっぷり、省ける箇所についてはさっくりで対応しつつ、主様と一緒に楽しく遊んでいければと思います。是非是非、これからもよろしくお願いいたします……!)
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