匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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…………。
( 離れていった温もりに、追い詰められた表情で俯いたのも束の間。隣におろされ直した温もりに顔を上げれば、月光を反射する優しいブルーと目が合って。──この人に相応しくなりたい、必要とされたい。そんな娘の内心を見透かすように、目の前の男はこれ以上なく甘い口実を投げかけてくる。"いい子"なんかでいなくていいと。"いい子"でなくとも、自分は相手に相応しいのだと。これまでずっと重く感じていた鎧を脱がさんとする太陽は、ビビにとってこれ以上なく温かく、容赦なく身を焼くようで。そうして、悪戯っ子のような表情で片眉をあげた相棒の言葉に最後。ふっと小さく破顔した後、その瞳に覚悟を決めるような神妙な光を微かに灯すと。"食事中に席を立たないように。神に感謝して静かにいただきなさい。"と、かつて学院時代に何度も聞いた、そんな些細な言いつけなら、自分にも破れるような気がして。 )
ギデオンさんは、"悪く"……なんか、ない。
( そのまま、ただ重力のまま撓垂れ掛かるように、相手の肩に上半身を預けると。「毎日じゃ、なくても良いです……遠征も寂しいけど、大丈夫」そう分厚い肩口にぐりぐりと、丸い額を擦り付けながら漏らした声からは、先程までの強情な色はすっかり消えて失せて。「私、冒険者としての貴方も……好き」と、今更どこか恥ずかし気な告白は、これまで一年間向け続けてきたどの愛の言葉よりも余程小さかったが。大丈夫、ギデオンさんの言いたいことは伝わっている、と相手にもしっかり伝えられるように。それまで相手に肩で塞いでいた視界をゆっくりと上げ、代わりに自ら未だ微かに震える両腕を広い背中へと絡めれば。先程無理に引き出された"ワガママ"とは違う、もっと現実的な、本気で、叶えてもらいたい己の"望み"と真剣に向き合っていたかと思うと、おもむろに。自分でも初めて気づいた結論に、逞しい腕の中、いっそあどけない様子ではにかんで。 )
でも、無理はしないでほしい。身体を大事にして、しっかりお休みもとって……ご飯も、そっちはあまり心配してないけど、ちゃんと食べてね。
それで、その……できれば。できれば、その時、隣にいるのは私がいいなって思うんです……。
……! わたし、あなたの家族に、なりたい……
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