匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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どんな、ですか……?
( 歴戦の勇士であるギデオンが立ち上がるのも困難になる様な疵。島で治療した時もその魔素のしつこさには手を焼いたが、それ以降何度取り除いても再生し続ける闇の魔素に、薄々その手の悪意ある魔法だと勘づいてはいた。しかし医者の言葉にそこまで深刻なものだったとは初めて、いや、態と考えないようにしていたのかもしれない。兎に角、ギデオン同様唖然として、意地悪な医者の質問に怒るのも忘れて口元に手を当てれば、記憶をたどるように瞳を伏せる。あの時は必死だったから、ギデオンの心臓を食い破らんと入り込む闇の魔素を、自身の聖の魔素を流し込んで押し流したはずだ。形を取らないように見える魔素もとい魔力だが、精霊の加護や特殊な地形を除き、一定の空間に含まれる魔力量には限度がある。悪意のある魔素を取り除いた箇所を、自分の魔力で満たしてそれ以上入り込めないようにする。言葉にすれば至極単純だが、実際に行おうとすれば膨大な魔力を必要とする机上の空論に近い空言である。実際ビビの説明を聞いた医者も目を一瞬白黒させてから「そりゃ魔力不足でぶっ倒れもするでしょうねえ」この人が終わったらアナタの番ですから油断してるんじゃないよと、意地悪な物言いに似合わぬ心配を瞳に浮かべる様子は、やはり人の良い宿の主人が信頼する医者なのだろう。ギクリと縮こまるビビの説明を受け、医者はもう一度、今度は自身の治癒魔法をかけてみたりとギデオンの肩を診察し直せば──ははあ、と意味深に頷き。「これは珍しい。お嬢さんの治療魔法とアナタの体質が奇跡的にあってるんですわ。確率的には0じゃあないですけどね、長年こんな仕事してますが、ここまであってるのは初めて見ました。お嬢さんサラッと言ってましたがね、人の体に入り込んだ魔素を取り除くなんて簡単な事じゃないですよ。確かに残存性・復活性が厄介なヤツですが、これなら定期的にお嬢さんが治療すれば克服も目指せるでしょう。」と、2人を安心させるように優しく微笑み「"公私共に最愛のパートナー"で治療の相性も宜しいとは誠に結構ですね」と、何処ぞの地元新聞の内容を引用して揶揄ってくるのは、前言撤回。矢張り純粋に性格が悪いんじゃなかろうか。
ギデオンの診察が終われば、ビビの方にはあと数日は魔法の使用を控えて安静にしておくこと、と実に簡潔な診断を下して、救急な処置がメインとなりがちなヒーラーに、定期的な治療の方法を伝え「何かあればすぐ頼るように」言い残して医者は去っていくだろう。 )
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