匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
|
通報 |
……ギデオンさん、まずはウェンディゴを、……!?
( 二つの資料を照らし合わせて。声も無く項垂れてしまった相棒に寄り添うと、その目を真っ直ぐに覗き込む。"ネズベタ市"に"フンツェルマン"工具店、それらの単語には、ギデオンから少々の注釈をいただいたものの、ビビとて今のこの状況が最悪なものであるということは正しく理解している。しかし……いや、だからこそだろうか。ギデオンの苦悩とは裏腹に、改めて──やはり数日後の儀式は絶対に止めなければ、とビビの心は決まっていた。みすみすあの優しい少年を魔獣になどしない。将来、可愛い姉妹達に酷い罪を背負わせない。彼、彼女らには自由な世界を生きる権利があって、未だに信じ難いフィオラの罪は、今の大人世代で精算されねばならない。そう大きなエメラルドを真っ直ぐに煌めかせて──まずはウェンディゴを、『倒しに行きましょう!』と、ぎゅっと拳を握りかけた瞬間だった。外から聞こえてきた物音に、相棒によって考えるより早く用具入れに押し込まれると。外から聞こえてきた会話の内容に目を見開くこととなるのだった。
「首尾はどうだ、冒険者たちの誘導は上手くいったか」まずそう口を開いた男は、この数日間レクターの調査に振り回され……もとい、付き添っていた村の青年だ。「大方な。今頃、地下洞窟で"冒険"中じゃないか──……ただ、あの若い女ともう一人……ギデオン・ノース、といったか。ああ、昨晩イシュマを殴ったやつだ。あの二人の姿が見当たらない」そう答えた男の方も何度か姿を見た覚えがあるが、どうやら男達は用具入れの侵入者に気づいたわけではないらしい。さっさと必要な物を手に入れて、不用心に離れて行こうとする背中に──しかし、ビビら二人の表情は晴れない。今、誘導って……地下洞窟……? そう小さく頭を動かして、ギデオンと目を合わせると、相棒の顔色を見るにビビの聞き間違いでは無さそうだ。続いて「レクターもいい加減うるさいが……アイツは何時でも構わない。まずは冒険者の方を仕留めるんだ」そう耳にしたその瞬間。「極力女の方には見られるなよ、泣かれると萎える」「そういえばあの年増の方は随分うまく──」と。扉の閉まる音と共に続いたそれは、全くもって耳に入らずに。未だ用具入れの中、真っ青な顔色で掻き消えてしまいそうな呟きをポツリと。 )
…………私、地下洞窟の入口を探してきます。
ギデオンさんは、どこか、安全なところに……
| トピック検索 |