匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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( 当初は三つ巴だった船上の追いかけっこは、いつの間にか絆を深めていた記者と少年らが手を組み3:1となっていた。本調子ではない上に、狭い船上は小回りの効く少年が圧倒的に有利とはいえ、情報移送魔法にこそ触れさせないものの、ちょこまかと腕をすり抜けられれば、本職としてはそれなりにプライドが傷ついて、よく彼らを捉えられたものだと、ジェフリーに対し謎の感心さえ向け。ギデオンさんも見てないで助けてくださいよ──と振り返れば、何やら相手からも丁度声をかけられる。相手に習い水平線に目を滑らせれば、目を疑うような光景に一瞬立ちつくし )
……此方こそ。約束守ってくださってありがとうございました。
( "絶対に帰ってきてください" その単純にして、時に冒険者にとって何より難しい、エウボイア号の彼らには果たせなかった約束をギデオンは守ってくれた。細められた薄氷色の瞳と、朝日に煌めいて靡く金髪、相手の穏やかな笑顔に一瞬見とれてから、此方も蕩けるような笑顔で応えて、ずっと見てみたかった広い海と水平線を初めて、ゆっくりと眺めることが出来れば背後から、間の抜けたタイミングで響いた情報移送完了の音に深いため息を漏らすこととなった。
それから、一晩にして警察署長とギルドの冒険者達を失ったグランポートは大混乱を窮めた。彼らの悪事は逞しい記者たちにより、号外として瞬く間に周知され、伝説の魔物やエウボイア号の幻影に市民達は大いに湧き、ついでにギデオンとビビは少々居心地悪い思いをすることとなった。それでも、船上ではあれほど元気だった少年達が、両親を前にして糸が切れたように泣き出し抱き合っているのを見れば、心から良かったと此方もつられて少し目元が潤みもして。トリアイナは引退して難を逃れていた元冒険者たちを中心に立て直しが進むらしい。自分に冒険者の資格はないと依頼人の青年は固辞していたが、『人手が足りねえんだ、シカクもサンカクもあるか!』と宣うTHE海の男!という風貌の壮年の大男に引きずられていく表情は、今までで1番柔らかく見えた。暫くこの混乱は続くだろうが、この逞しく元気な港町のことだ、すぐにまた活気を取り戻しキングストンの川でもグランポートの船を見ることになるだろう。
さて、そんな事情で数日グランポートに足止めされる間、ギデオンの肩の傷を放置する訳にもいかず、宿の主人に良い病院を尋ねれば、わざわざ宿の部屋に医者を呼んでくれるという相変わらずの高待遇ぶり。現場の応急処置をしたヒーラーとして診察に立ち会えば、念入りな診察が済んだ後「やあ、なんで生きてるんでしょうねえ、普通死んでますよアナタ」という柔和な顔をした高齢の医者から飛び出した暴言に、ギデオンと顔を見合わせて。 )
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