匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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俺が編むのか? 俺が?
……しょうがないな……
(当然ながら、花冠だなんて可愛らしい代物なんぞ、少年時代に一度とて作ったことのないギデオンだ。そんな人間のお手製で本当に構わないのか、知らないぞ? なんて問う声は、しかしさほど本気でもなかった。たった今伝えたように、自分自身、ヴィヴィアンの作ったものなら何でも喜んでしまえるからだ。──ついでに言えば、髪を解いたときのあのふわりとした香りに、ギデオンはてきめんに弱い。わかってやっているのだとしたら、相手はとんでもない策士である。
故にやれやれと、呆れるふりをして受け入れてみせれば。膝の間で堂々甘えきるヴィヴィアンの髪を、大きな左手で撫で下ろしてやりながら、右手は自分の花冠を取り外し、目の前であちらこちらに傾け。まずはあらゆる角度から、その構造を注意深く観察する。こういうところに、生来の生真面目さと職人肌が思わず出てしまうのだろう。やがてああ、なるほどな、と片眉を上げれば。(少し持っていてくれ)というように、一旦冠を相手に預け。周囲の草花に目を走らせ、手頃なのを見つけるなり、少しだけ腕を伸ばして、ひとつひとつ摘み取っていく。──作業に集中してはいるが。どうやら、腕のなかにいる相手のことは、片時も離すつもりがないらしい。
そうして材料をある程度揃えれば、少し腰を浮かせて、ゆったりと座り直し。相手を軽く手で押して、自分の胸板にすっかりもたれかかるようにする。無論これは、自分の手元の作業がよく見えるよう協力してもらうだけのこと──別に決して、それにかこつけて相手を堪能する意図はないのだ。だからあくまでも、作業だけは真剣に。まずは土台にする若いトクサを柔らかくほぐし、相手の小さな頭に合わせた円形を形づくる。そうしてお次に、葉っぱの大きさが大きく異なる二種類の下草を、グランドカバー代わりに編み込み。その上から、大小も色も様々な愛らしい花を、しっかり結びこんでいく。その指先に迷いはない──ただ、繊細な作業なので、どうしても時間がかかる。故に、ある程度作業が軌道に乗ったところで。「そういや、」と、これまでののどかな沈黙を、こちらの方から緩やかに破り。)
ここに来る前に、他の連中を見てきたが……皆上手くやってるようだ。クラウ・ソラスの連中は村の男と狩りに行ったらしい。レクターは次々に何か発見しているようでな……報告書が楽しみだ。
おまえのほうでも、子どもたちから何か聞けたか。この辺りの気候だとか……魔獣関連の話だとか。
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