匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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( 夜とは言えど温暖なグランポートの海で数時間の潜伏後である。潮で髪バサバサだし、絶対メイクよれてるし最悪──1人の女性としてはあまり近距離で覗きこまないで欲しいところだが、ギデオンの心配そうな視線を前にして顔を逸らすこともできずに受け入れる。それでもひとしきりこちらを観察した後、安心した表情をうかべる相手の優しさを見れば、胸がきゅんと主張するのも事実で。そうこうしているうちに一気に賑やかになった周りを見回して、少年達の言っている意味がわからずギデオンに視線で助けを求めるも、あっけらかんと纏められてしまえば、説明を求めて不満げに口を尖らせかけたところで、相手の真剣な表情に此方も姿勢を正す。暫く殊勝な表情をして聞いていたものの、ギデオンの謝罪を聞けばムッと眉をひそめて上半身を乗り出し、顔が近づくのも厭わずに声をあげて。 )
──謝らないでください!
蜃気楼魔法を使うって決めたのも、自分の限界も忘れてバンバン魔法使ったのも私です。……それを、謝られるほど子供じゃありません。
( 確かにギデオンに頼られて嬉しかったし、調子に乗って魔法を使いすぎもした。しかしそれはビビの至らなさであって、ギデオンの責任では決してない。最後の問いには「ご心配はありがとうございます。体調は問題ありません。」と、心外そうに座り直しながらも律儀に答え。悔いに揺れる氷の瞳を正面から見つめれば、言外に侮ってくれるなと憤慨するも、そもそも己の失態が原因なのだから救えない。こちらもため息をつき、2人の間になんとも言えない気まずい空気が流れかけた瞬間「深夜の"げきとう"の裏、おもいしたう、冒険者2人の、かんけーにも、せまる……何だこれえ?」「いけないんだー!エロいやつ読んだら怒られるぞ!」と船頭の方であがった無邪気すぎる声が2人の間を横切って。片方の少年が纏められた資料を不思議そうに読み上げ、もう片方の少年が恥ずかしそうにギャーッと叫び声をあげれば、「バッ……」と言葉を失った記者の青年が、草案を取り返そうと慌てて立ち上がるも、鬼ごっこの気配に少年達のテンションはあ上がるばかり。どうやら記者達は、レイケルやジェフリーの決定的な証言やファーヴニルの咆哮の他に、ちゃっかり2人のやり取りも記録していたようだ。流石こんな危険な場所に乗り込むだけあって強かだなあと、ビビがどこか遠い目で感心さえ覚えかけ、船降りる前に取り上げればいいやと投げやりな視線を向けるも、既に情報移送魔法の準備を開始している記録係を見つれば、此方も慌てて立ち上がり。小回りのきく少年と、記者の青年、そしてビビが一気に立ち上がったものだから、船上は再び一気に賑やかになり、「勘弁してくださいよお、ひっくり返っちまう」という操舵手の声も加わる頃には、港も近づき他の船や炊事の煙が見え始めて。 )
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