Petunia 〆

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匿名さん  2022-05-28 14:28:01 
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  • No.719 by ギデオン・ノース  2024-01-20 15:06:39 



…………、

(ごく微かな抱擁の感触、そしてうわ言のような掠れきった囁き声。噛みあっていないと言えば噛みあっていないいらえのはずだが、しかし今はギデオン自身もぐったりしているものだから、いつもの過保護な心配性が頭をもたげることはなく。寧ろ、ただ撫でられるまま目を細め、薄闇のなかの相手を見つめて、心地よい痺れに身も心も委ねる始末だ。そのうち、相手がふと瞼を開けて、とろんとした、それでもこちらを案じるようなまなざしを覗かせてきた。──ふ、と小さな笑み交じりの吐息。可笑しさだとか、愛おしさだとか、おそらくその類いの何かが、思わず零れ出たのだろう。
目を閉じ、体を屈めるようにして。相手の額に鼻梁を寄せ、長い長い息を吐きだす。もはや何を言うのも気怠くて……きっとこうすれば、自分が安堵と満足に浸っているのがわかるはずだと、そう考えて懐き続ける。だがやはり、それでももう少し、安心を伝え直しておこうかと。繋がり合ったままのくせして、まるで幼子を寝かしつけるように、相手の背中に回した手を、ぽん、ぽん、と軽く動かす。先ほどの荒々しい盛りから一転、こうして穏やかな静けさにふたりして沈む時間が、ギデオンは好きだった。いつまでもこうしていたいところだが……しかし今は、夜半の2時か、3時か。とにかく、よく眠るたちである恋人にすれば、これ以上の夜更かしは身体に障ってしまうだろう。明日も仕事があるのだから、ギデオン自身も休まなければ。
そう感じたところで、不意に小さなさざ波が湧き起こり。ぶるり、と身を震わせたかと思うと、本能的に押し付けて、まだ続いていたらしい、最後のひと息を大きく吐き出す。引いていた筈がぶり返してくる、微熱にも似た恍惚の余韻。たまらず呻き声を漏らし、呼吸をごく微かに乱す。いつもの比にならないほどぬかるんでいることも、今のでようやく瘤が消えたことも、確かめずとも感じ取れた。故に、随分と慎重に、間違いのないよう引き抜くと、サイドテーブルに手を伸ばし、ほとんど無意識に後始末に入り。そうして、あらかた──のつもりが、きちんと綺麗に──片付ければ。ごみ箱にくず紙を放って、今度こそ相手を抱きしめ、思考を放棄しようとして。
「……ビビ、」と。何とはなしに、一度だけ名を呼んだ。それに相手が応えたにせよ、応えられなかったにせよ。その汗に濡れたこめかみに、唇を柔く押し当てる。これでデュベを引き上げていなければ、まだ残っている大きなしっぽが、ゆらゆら揺れていたことだろう。相手のあどけない顔を、優しい眼差しで見下ろすと。少し身じろぎし、落ち着ける場所を見つけては、ギデオンもすっかり横たわり、相手の栗毛に顔を埋める。──肉団子の効果が切れたのか、或いは散々求め合ったからか。恋人の香りがいつもより鮮明に感じられ、己の肺腑がたちまちのうちに満たされた。そうして何度も深呼吸を繰り返すうちに、いつしかギデオンも、睡魔の闇に落ちていき。眩しい朝陽が部屋をすっかり照らしきるまで、ほとんどぴくりともしなかった。
──このときのふたりは、まったく知る由もなかったが。実はこの睦みあいこそ、ギデオンにかけられた悪戯魔法を解く鍵だった。人体は元々、普段から微量の魔素を発しているが、ギデオンは濃厚なそれを……天文学的な確率で相性の神懸かっているそれを……ほとんどゼロ距離で、体中の至る場所から、数時間も取り込み続けていたわけだ。故に朝方、ふたりがすっきり目覚めた頃には、犬のような耳もしっぽも、綺麗さっぱり消えていた。歯も爪も元通り、抜け毛ひとつさえ残さずに、ひと晩で無事解決である。……しかし結局、ふたりの寝床は、随分と酷い有り様に成り果てていたものだから。ふたり笑って、シャワーを浴びて、そこでもちょっと戯れたのち。ようやくさっぱり切り替えると、爽やかな朝に向けて、元気に動きだしたのだった。)



(──さて、澄んだ寒さが肌を刺すとある日。ギデオンとヴィヴィアンは、いつもどおりに出勤するなり、エリザベスに声をかけられた。最上階の執務室がお呼び出しとのことである。
はて、いったい何事だろう。ふたりが以前の関係であれば、十中八九、クローズドクエストの拝命に違いないのだが。交際関係にあることを──今はそれにとどまることを──きちんと公表済みであるから。経費周りで問題視されないよう、ふたりきりでの重要任務は迂闊に回されないはずなのだ。「戒告か何かじゃないといいんだが……」なんて言い交わしながら、扉をノックし、押し開けると。そこに待ち受けていた御方は、しかしギルドマスターではなかった。そう言えばかの方は今、王国議会からの招集を受け、中央に登城中である。彼か彼女か、詳しいところは幹部の数人しか知らないのだが、とにかくあの御人が数日ギルドを離れる間、諸々の指揮と判断は、臨時代理に託されている。つまりふたりを呼び出したのは、高級な椅子ににこにこしながら座っている、如何にものんびり屋な──この髭もじゃの、傷だらけの大男である。
向かいのソファーに腰を下ろし、要件を窺ってみるに。どうも代理は、ギデオンとヴィヴィアンに、合同クエストのメンバーとして出張してほしいらしい。来週から約2週間、場所は国内中部のヴァランガ地方。旅費や食費、消耗品費などの類は、きちんと持ってもらえるという。「……いいんですか、」と、ギデオンが困惑気味に訊ねてみれば、「いいのいいの」と、代理は至極のほほんと、(いかつい体躯に全く似合わぬ)温厚な声で答えた。
「君たちが仲睦まじいのは知ってるよ。だけど僕ら幹部にとっては、君たちふたりの冗談みたいな相乗効果のほうが、よっぽど重要なんだよね。トリアイナの不祥事解決、夢魔騒動の捜査、ライヒェレンチの増援、トロイト退治、ドラゴン狩り……他にもいろいろあったろう? とにかく、今までのああいったのと同じような活躍を、またふたりにしてほしいんだ。ビビちゃんだって、もうお医者さんから太鼓判は捺されてるんだって? それなら久々に、少し骨のあるお仕事を担当してみてくれないか」。
どうやら諸々の懸念については、既にギルマスと話し合い、対処方針を固めているらしい。それなら、と頷いて、子細の記されている手元の資料に目を通した。──今回の合同クエストの主催者は、“西の王剣、東の聖剣”……などと双璧扱いされることでお馴染みの、国内東部の大型ギルド・デュランダル。そこが受注したクローズドクエストが、どうやら特殊な内容らしく。せっかくなら周辺の公認ギルドも一緒にやってみませんか、と、カレトヴルッフも誘われたらしい。他にもアラドヴァル、アルマツィア、クラウ・ソラス……この辺りの中型ギルドも、参加が決まっているという。要は、中部地方にある公認ギルドから少しずつ冒険者を募り、皆でひとつのパーティーを築き、デュランダルの受注した遠征に赴くのだ。
その少し面倒な経緯を聞いて、不思議そうな顔をする顔のヴィヴィアンに、ギデオンの方から解説することにした。──今回のような合同クエストは、ライヒェレンチでの掃討作戦とはまた別で、人員の増強よりも、冒険者同士の交流会を意図している。国内の冒険者ギルドは、無論定期的に会合を行っているけれども、同じ現場で汗を流すのはまた違う。知識や技術、人脈が行き交い、よその冒険者同士の横の結束を強められるからだ。主催はだいたい大型ギルドが請け負うもので、うちも頻繁にやっている……カーティスやバルガスが暫く帰ってきていないが、実はあれも、まさに別の合同クエストに駆り出されているところである。こういうのは、通常のクエストとは趣が異なるし、自分たちは呼ばれる側だから、遠征より出張と呼ぶ。東のあちらさんが音頭を取ってくれるのだから、気楽に行って大丈夫ではあるだろう。必要な指示はデュランダルが出してくれる。だから俺たちは、交流に気を割きつつも、ただいつもどおり仕事をこなしに行けばいい。
「そう、そのいつもどおりの活躍というのが、大事なところでね」──臨時代理がここで初めて、目をきらりと光らせた。「ギデオン、お前は言わなくてもわかるだろ。今までどおり、上手に見聞きして、嗅ぎまわって、尋ねて聞いて……そうやって、必要な顔と顔をしっかり繋いできてほしい。根回しの下拵え、お前の得意分野だろ? それで、ビビちゃん。君を選んだのは、君の出身が魔導学院研究部だからだ。今回の仕事には、そのキャリアが役に立つ。行けばわかるから、そこで最大限のことをしてきてくれ。それに、今回の成果次第では──昇格の推薦を取り付けられるかもしれない」。
“昇格”とは言わずもがな、冒険者ランクのことだ。これが上がると、ギルドから安定して支払われる固定給が変わってくるというものである。生活をしていく上で、この安定感の向上というのは、かなり重大なポイントだった。それに、実際はこれ以外にも幾つか必要になるだろうにせよ、幹部からの推薦をしっかり貰えるのであれば。通常の昇格に比べ、必要な諸般の手続きがかなりスムーズになるはずだ。
思わずヴィヴィアンと顔を見合わせ、ふたり同時に頷いた。既に今も、世帯収入は充分にある。しかし所得にかかる税金を加味しても、余裕を持って困るということはない。それに今は、ヴィヴィアンより引退が早いかもしれないギデオンが、これからの働き方を試しつつあるところでもあるのだ。ふたりとも現役でいるうちに、できることはしておくべきだった。
「引き受けます」と、ふたりで答えた。──ヴァランガ出張の決まりである。)


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