匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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( ぐわり、と縦に開く大きな歯列。ビビが小さく割って食べる団子を軽く一呑みにする豪快な顎と、逞しい喉元。今日はそれに加え、鋭い牙も微かに覗く口元に、ビビは何度観ても心底惚れ惚れと見蕩れてしまう。その当人であるギデオンの、素人とは思えぬ的確なアドバイスに、先程よりも少し塩気とハーブを加えた黄緑のスープがみるみると減り、あっという間に鍋の底を尽く光景が心底幸せで。少しの眠気も相まって、その晩のビビはふにゃんと蕩けた笑みをずっと浮かべていた。しかし、牙が引っかかるのか、ギデオンの口に少しついたスープを拭ってやったり、申し訳なさそうに片付けを頼んでくる、ぺたんと垂れた耳を撫で回したり。相手にとっては不本意極まりないことだろうが、普段強情な相手が此方へと甘えてくれることが何より嬉しくて、この人のためなら何でもしてあげたいという気持ちに上気せあがっていた頭へと、いきなり冷水をぶっかけたのもまた愛しい愛しい恋人だった。──こんな寒い冬の日に、一人リビングで寝るなんて。相変わらず、自分を粗末に扱う相手に、それまでずっと眉尻を下げ、ぽやぽやと緩んでいた桃色の表情が、すっと悲しげな色に変わる。分厚い毛皮があるとはいえど、それだって早朝に治るかもしれないし、そもそもそういう問題じゃないのだ。ビビにはとことん甘い恋人に、自分がここでヤダヤダと駄々を捏ねれば、寝室に誘導することは決して難しくないだろうが。しかし、それではこの不器用な恋人は、自分を大切にする術を学べぬまま、ビビが居なくなればまた自分を粗末にするに違いない。そう旋毛に落とされた柔らかい感触に、まずはゆっくり頷いてから、特に無理強いするでもなく一歩下がれば。その選択は相手にして欲しくて、あえて強引な二択を迫る。それでも相手が誇示する様なら、寸前までハンドクリームをこねていた手元をゆったり広げ、ふわもことした寝巻きが飾る優美な曲線を相手の目の前に差し出すだろう、 )
……そっか、おやすみなさい。
でもギデオンさん、明日は久しぶりにとってもよく晴れるんですって……今晩はこんなに寒いのに。
ねえ、寒い中ひとりで寝るのと……それとも。明日の午前中いっしょに毛布を干して、明日もポカポカなベッドでいっしょに寝るの、どっちが良いと思います?
……ね、おいで。
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