匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
通報 |
(ひどく動揺した様子で顔を隠す相手の切実な心情を、しかし男のギデオンは知る由もなく。血色はマシになったか、目の焦点はどうか、つぶさに目視で確認していき。まだ疲れが残ってはいるが、先ほどのような異常は見られなくなったとわかれば、相手の申し訳なさそうな顔に反し、こちらは安心したように表情を緩めて。「いや、ファーヴニルは……」と教えようとしたのを、「オレが倒したんだぞ! オレが!」と背後からのわんぱくな声が威勢よく引き継いだ。振り返れば、船の舳先で少年が仁王立ちである。「いや、オレ“たち”だろ」と記者の青年が不平そうに口を挟むも、「でけーねーちゃん起きたんか! なあ、オレんちに朝飯食べに来いよ!」、あっけらかんとナンパしにかかる笑顔の少年。その小さな頭を記録係が無言でバシッと叩き、記者の青年は(こちらにはお構いなく)というように愛想の良い笑みを浮かべ、ふたりと一緒に背を向けた。すっかり親しい3人におかしそうな目をやってから、「ま、そういうことだ。ファーヴニルだったものは今、後ろの船で運んでる」と、相手に視線を戻し。それから不意に真剣な表情へと切り替えたのは、自分の方こそ謝らねばならなかったからだ。小さく息を吐きながら、己の無茶な指示を悔いる思いを声に滲ませて。)
おまえが倒れるまで魔力を使い果たしたのは、俺のせいだ。特に蜃気楼魔法、あれひとつだけで思えば常人じゃありえないくらいに大量消費してくれていたのを……無尽蔵のように扱ってしまっていた。本当にすまない。体調はどうだ……?
トピック検索 |