匿名さん 2022-05-28 14:28:01 |
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ギデオンさん……?
これもそんなに嫌な匂いしますか……?
( それは名実ともに、愛しいこの人の物へとなる前のこと。はっきりとカーティスへの敵愾心を見せつけられた前回とは違い、身も心も疑いようも無いほどお互いの色に染まり合って。尚収まりきらぬ、溢れんばかりの感情を、相手に受け止めて貰っているつもりの今だからこそ、まさか相手がまだそれを過剰どころか、不足に感じているなど、不機嫌の原因に思い至るまで、少々時間がかかってしまう。仕方なく、ぷいとそらされてしまった表情の原因を手元のそれへと結びつけ、小さく尖った鼻先をふんふんと震わせれば。鈍い嗅覚に、羊ベースのブイヨンが程よく香ったところで、やっと。鎖骨に響いた不満げな唸り声に、ギデオンの不機嫌、その原因に気がついて。
そうして、拗ねたように打たれる尻尾にも気づいてしまえば、不遜な態度をとりながらも、ビビをがっちり捉えて離さない高めの体温が、もう心底愛おしくって堪らない。──んっ、ふふ…ふ、と耐えかねたように肩を揺らして、「ごめんなさい、ごめんなさいったら、もう、あんまり可愛いんですもの」と、一層低く響いた唸り声に、此方からも強く相手を抱き締め返すと──さて困った。こんなにも深く愛しているのに、まだ足りないだなんて、どうやって伝えたなら良いだろう。よしよしと丸い背中を撫でながら、「ギデオンさんだけなのに、」と、せめてもの利子に旋毛、生え際、耳の付け根……と唇を寄せて。実際、だんまりの恋人と、手元の肉団子を交互に見遣れば。ほっそりと白い手首に、黄金の肉汁が垂れた瞬間が契機だった。肘まで汚しそうな雫をぺろりと舐めて、「ん、やっぱり美味しいですよ」と青い瞳へ視線を合わせれば、そのままギデオンの唇に吸い付いて、香り高い口腔をたっぷりと堪能させることしばらく。お互いの味しかしなくなった口内にゆっくりと離れて、「──……すごい。牙まで生えてるんだ」と、濡れた唇を楽しげに歪めれば。
この時、迂闊な言質を与えてしまったビビの瞳に映っていたのは、本能のままに此方へ縋る幼気で、守り慈しむべき対象だった。 )
ほら、美味しかったでしょう?
だから残りもちゃんと……そうだ、ご褒美があったら頑張れますか?
なんでもひとつ……私に出来ることですけど、お願い聞いてあげるから、ね、あーんって……
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