Petunia 〆

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匿名さん  2022-05-28 14:28:01 
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  • No.694 by ギデオン・ノース  2023-12-16 11:07:42 




ああ、今からでも……と。
言いたい……ところだな……

(相手の弱々しい恥じらいぶりを、よしよしと頭を撫でて慰めていた矢先。最後に付け加えられた殺人的な一言に、思わずたまらなさそうに呻く──いつものお決まりのパターンだ。よって、その後もやはり同じ。己の太い腕を回しかけ、相手を横からぎゅうぎゅうと、目いっぱい抱きすくめる。羞恥に火照っているヴィヴィアンの体温、このぽやぽやした温かさがたまらない……なんて、相手をぬくぬく堪能しながら。吐息混じりにのっそりと返したのは、なかなかに不甲斐ない台詞だ。──今夜はただでさえ疲れがたまっていたところだし、相手の反応も、想定よりずっと落ち着いていて安堵した……そのせいか。既にとろりと瞼を閉ざしているように、忍び寄ってきた眠気を追い払えそうにない。
しかし別に、それだけが理由というわけでもないのだ……本当だ、と。「一緒に悦くなるには、もう少し慣らしておかないと……」「そもそも、退院してからまだ二ヵ月も経っちゃいない……」等々。相手の旋毛に唇を寄せながら、あれこれ言い訳を挙げ連ね。しかし結局最後には、「……それでも、じきに……貰うとも……」と、愚直すぎる野心まで、馬鹿正直に打ち明ける始末だ。──あなたならいい、あなたのためなら。これまで何度だって、可愛い恋人からそう云われてきた。その責任はいずれしっかりとってもらうし……ギデオンの方もまた、相応の責任をきっちり負う腹積もりでいる。……ああ、そういえば。ヴィヴィアンと暮らすこの家ではなく、敢えてギルドの私書箱宛に出してもらうことにした手紙に、「来週末には」と書かれていたっけな……と。そこでふと、アイスブルーの目を薄く開き。その華奢な背中を撫でさすりながら、腕の中の恋人を見下ろす。もしも相手が、その気配を感じとってか、こちらを無邪気に振り仰いだなら。そのあどけない顔を数秒眺めて、ふ、と幸せそうに微笑み。まろい額にキスを落として、また優しく抱きしめるだろう。)

……なあ、ヴィヴィアン。今夜は……

(……今夜はこうして、喋りながら寝ることにしないか。珍しくギデオンの方から、そう素直に甘えてみせたのは……全てはそう、眠気のせいだ。ギルドでも、クエスト先でも、ラメット通りでも、ギルバートの前でも……来たるべき。その日のときも。相手が惚れてくれた大人の男の顔を、きちんとしてみせるから。だから今夜だけはまだ、「おやすみ」を言い交わして、帳を下ろしてしまいたくない。己よりずっとうら若い恋人にそう強請り、それからしばらくの間、互いにしか聞こえぬほどの小さな声でひそひそと囁きあえば。……程なくして、相手を優しく撫でる手を止め、先に寝息を立てはじめたのは、果たしてどちらだったろう。気づけばふたりとも、ひとつのデュベに仲睦まじくくるまって。月明かりの差し込む下、温かい手を握り合いながら、すやすや眠り込んでいた。)


(かくして、怒涛のドラゴンから一夜明け。カラドリウスの歌声と共に、また新たな朝がやって来る。しゃきっと元気を取り戻してギルドに出勤した二人は、しかしまたすぐ、ギルドの奥の応接室に呼び出されることとなった。……昨日の件でギルドに呼び出されていた、ヴィヴィアンの父ギルバートの元に。なんと王国議会の官僚が、わざわざ訪ねにきたというのだ。
如何にも切れ者という顔つきをした、四十代半ばほどのその男曰く。──今朝早くにガリニア大使館から、「ギルバート・パチオを我が国に戻らせろ」と、相当におかんむりな怒鳴り込みがあったそうだ。なんでも今、帝国側の魔導学院が、ギルバートの置き土産のせいで大変なことになっているらしい。詳しく聞くに、どうやらかの機関は、彼の弾丸帰国を聞きつけた途端、ならば尊重無用とばかりに、構内にある彼の研究室を暴きにかかった。……そして当然、研究守秘の目的でガチガチにかけられていた魔法陣が発動し、惨事を引き起こしたとのことだ。とはいえこれは、帝国の研究者は皆やっている工夫であり(向こうは学界での政治闘争まで激しく、自衛が当たり前の文化である)、何もギルバートが奇人というわけではない。それにどちらかと言えば、ギルバートの組んだ陣を一向に解き明かせない向こうの学者が、皆間抜けという話になる。とはいえ、帝国はメンツ主義。“わざわざ招聘してやったのに、勝手に帰国し、挙句こちらの顔に泥を塗ってきた”として。ギルバート・パチオに対し猛烈に怒り、奴を寄越せと要求しているのだ。
行けば当然危険である。それに、ギルバートにも言い分がある。向こうの魔導学院は、トランフォードからの手紙を長らく握り潰していた。問い質したとてしらを切るだろうにせよ、それは明確な政治的工作。そして他にも……単にこの件が最後の決め手だっただけで、以前からも本当に、いろいろと酷い仕打ちが度重なっていたそうだ。
それはこちらも把握しております、と官僚は苦々しく言った。──しかしこれは、少しでもたがえてしまえば、国事に至る事態なのです。支援は手厚くいたしますので、どうかご理解いただきたい。……それにあなたも、向こうのご本家にまで累が及ぶのは、決して得策ではないでしょう。
それを聞くなり、ギルバートの顔色が悪くなった。どうやらパチオ家は、この国の母体であるガリニア帝国の上流層に、元の血筋があるらしい。あの独立独歩を地で行くようなギルバートでも、人質に取られると弱ってしまうようなものが、愛娘のヴィヴィアン以外にあったのだな……という驚きはさておき。同席しているギルマスからも、責任は取りなさい、と言い添えられる。──本気であちらの学院を抜け出したいなら、相応の後始末はするべきでしょう。なに、こちらも散々迷惑をこうむったんです、やりたくないとは言わせませんよ。
ギルマスの言う“迷惑”とは、昨日出没したドラゴンのことである。あのエレンスゲはどうやら、ギルバートが連れてきてしまったものらしい。帰国時のどこかであの怪物の領空を犯し、それに怒り狂ったドラゴンは、空中に残るギルバートの魔素を執念深く追ってきた。そうして、ギルバートが一時野営した森に降り立ち、彼を探し回っていたのだ。──そしてギルバートの方も、理屈は全くわからないが、自分を負ったドラゴンが付近に来たことを察知した。それでギルドの監視を抜け出し、自分で落とし前をつけようと、冒険者たちより早く駆けつけていたわけである。ドラゴンの位置が推測より北上していたのも、ギルバートが人里から引き離してくれたおかげだった、というわけだ。
──そうだ、昨日のドラゴンの件然り。プライドの高いギルバートは、本来であれば、自分の招いた事態の始末を自分でつけたがる人間だ。そこにギルマスも官僚も、おそらく示し合わせたのだろう、鋭く漬け込むものだから。いろいろ弁を弄していたギルバートも、いよいよ首を縦に振るほかなくなったらしい。……せめて、と彼は弱々しく言った。出発する前に、せめて一度だけ、娘と食事をさせてくれ。……まだろくに、話ができていないんだ。
官僚は頷いた。今夕にでも宮殿の関係者室に顔を出し、そのまま翌朝出発してくれるなら、この後すぐに手配しましょう──まるでこの展開を読んでいたかのような、恐るべき仕事の速さである。一方、突然の事態、それも愛する父親がいかれる帝国に呼び出されていると知って、ヴィヴィアンは動揺している様子が見られた。故にギデオンは、ギルバートにも確認を取って(本人は非常に露骨に嫌そうな顔をしたが)、その食事会に自身も同席したいと言いだす。この話し合いに自分まで呼び出されたのは、おそらくこの動きのためだろう──こちらはギルマスの取り計らいだ。ヴィヴィアンを支えつつ、この機にギルバートと少しでも話しておくこと。これは何も、プライベートな意味だけではない。パチオ父娘の情報をいちばん近くで把握するのは、今後のカレトヴルッフの展望を左右する布石になり得る。……つくづく己の使える御人は、抜け目のないお方である。

そうして、その3時間後。官僚の乗ってきた黒塗りの高級馬車により、一同は政治家御用達の高級料理店に出向いた。随分な大盤振舞だが、「娘と美味い飯を食わせてやるから、やることしっかりやってこい」……という、国からの無言の圧力だろう。このテーブルの背後には、三つ揃えの背広を着た若い男が3人もついていた。彼らはギルバートのガリニア出向のサポートチームだそうで、どれも選りすぐりの人材らしい。彼らの護衛を受けながらガリニアに戻り、現地のトランフォード大使の後援を受けて、帝国の学院を正式に辞職する──これがギルバートの、これから為すべきことである。
とはいえ彼は、ギルバート・パチオという人間。ムール貝の身を取り出しながら、「ビビちゃん、後ろの妙な連中はいないものと思いなさい」なんて、何ら悪びれず宣う始末だ。それに対するヴィヴィアンは、顔色がまだ優れない。先日言っていたように、「パパときちんと話したい」のに、こんなにも急な展開……おまけに敷居の高い店で、複数の政府関係者に見られながらだ、無理もないことだろう。ちゃっかりとゲリュオン牛のフォアグラを堪能していたギデオンは、基本的には親子水入らずにさせようと様子を見ていたのだが。……ほどなくして、異端の天才として世界中で名を馳せているギルバートが、娘を前にした父親としては、壊滅的に口下手とみれば。「そうだ、ヴィヴィアン。カレトヴルッフに入ってからの、お前のいろんな活躍について。俺から親父さんに話しても?」と、あくまでごくさり気なく、会話の糸口に助け舟を出すことにして。
そうして、思えばあっという間に、別れを告げる時間となった。ギデオンとヴィヴィアンは乗合馬車でギルドに戻り、ギルバートとチームメンバーは、このまま公用車で宮殿に赴くのだ。最後はギデオンと男たちも、流石に少し身を引いて、遠くから父娘を見守った。ギルバートとヴィヴィアンは、そこでようやくほんの少し、本当の“親子水入らず”をすることができたようだ。話が終われば、男たちがギルバートの方に行き、ヴィヴィアンがギデオンの方に帰ってきた。彼女を優しく迎え入れ(本当はキスのひとつでも落としたいのを我慢して)、馬車に乗り込むギルバートを眺める。彼はすぐさま車窓を開けて、ヴィヴィアンを名残惜し気に振り返っていた。「……な? 言ったろう。親父さんは、今でもお前のことが大好きだよ」。恋人にそう囁いて。ふたりでそっと手を繋ぎ、遠ざかっていく黒い馬車を、いつまでも見送った。
──パチオ父娘を、ふたりきりにしてやる直前。ギデオンは、荒い息を吐くギルバートから、「僕のビビちゃんを絶対に泣かせるなよ……」と、酷く恨めし気に言いつけられた。……だがあれは、先日よりも少しだけ、自分のことを認めてくれていたような気がするが、はたして思い上がりだろうか。「すぐに帰って来るからな。絶対帰って来るからな!」と何度も息巻く魔法使いは、結局その言い草によって、ギデオンの決意をまたひとつ固めさせたのだ。次に帰国するときには、彼はもっとたまげる羽目になるだろう。呪われるかもしれないが──少しだけ、それが楽しみだ。思わず緩んでいた表情を、どうしたのと隣の恋人に問われれば。なんでもないさ、と今度こそ旋毛にキスを落とし。手を繋いだまま、ふたりでごくのんびりと、爽やかな夏空の下を歩き始めることにした。)





(──さて。あのときとは異なる時間、異なる場所で。ベテラン戦士のギデオン・ノースはその日、何とも深刻な問題に頭を悩まされていた。
事の発端は、数時間前まで駆り出されていたオーク狩りのクエストだ。森の中に棲みついている凶暴なグリーンオーク、そいつらを無事狩り尽くしたまでは良かった。問題はその後、帰りの道中に、悪戯好きなピクシーの大群が襲い掛かってきたことで。……基本的に冒険者は、ピクシーには反撃しない。それは彼らの正体が、洗礼を受けずに死んだ子どもの魂と信じられているからだ。だからギデオンたちは、きゃっきゃけらけらと楽しそうな小妖精どもを必死に掻い潜りながら、どうにか帰還したのだが。いくらなんでも、これは流石にやり過ぎだろう……と、鼻を抑えて嘆息する。ギルドロビーに入ってくる連中が、皆目をくわっと剥いてこちらを凝視してくるが、いちいち説明するのも飽きた。……ひと目見て、わかるとおりだ。
──金髪の頭に生えた、黒っぽい三角の耳。脚衣のすぐ上から垂れる、ふさふさした立派な尻尾。手の爪は太く鋭く伸び、指先と掌には黒い肉球がついている。極めつけに、顔の変化はないとはいえど、このあまりにも鋭敏な嗅覚。あのピクシーどもときたら、ギデオンとパーティーメンバーに──犬化魔法、なんてものをかけたのだ。
おかげで既に、臭い酔いが酷い。ジャスパーもレオンツィオも、早々に嘔吐して医務室に引き下がり。そこまではいかないアラン、セオドア、アリアでさえ、ロビーの端のテーブルにぐったりと突っ伏して、その目立つ尻尾も耳も、力なくしょげさせている。彼らの分の報告書を代わりに引き受けているギデオンも、胸のむかつきを抑えられない──辺りが臭くてたまらない。人間でいる時はさほど気にならなかったのだが、冒険者の野郎どもの汗や体臭、装備の臭いが、まさかこんなにも強烈なものだったとは。ギルドのカヴァス犬どもはよく平気だな、慣れの問題なのか……と顔を顰めながら、とにかく急いで書類仕事をやっつけにかかる。近場の別室でやればまだマシかもしれないが、己よりずっと若いセオドアとアリアが、緊急出動に備える義務できちんとロビーに留まっているのだ、自分だけ逃げるわけにはいかないだろう。とはいえ、これは……と。横髪をがしがし掻こうとして、己の変貌した爪を眺め、はあ、と深いため息を。とりあえず書き上げたひとつ目の書類を、カウンターにいるマリアのところへ持って行き。……非常~~~に白けた目つきをもって、無言で受領して貰えば、またすぐに“いつもの”柱のところに戻り、若手たちの書いた報告書を読み込みにかかるだろう。)



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